本間宗究(本間裕)のコラム

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2018.6.24

インフレが発生しなかった原因

6月13日に、「米国の利上げ」が実施され、「政策金利(FFレート)」が「1.75%から2%」に変更された。そして、今後も、更なる金利上昇が見込まれているが、一方で、「インフレ率」については、依然として、低い水準にとどまっており、現在、アメリカでは、この原因について、いろいろな議論が出始めている。つまり、「金利の上昇や景気の好転は、本来、インフレ率を上昇させる効果があるはずだ」という議論のことだが、実際には、「いまだに、国債価格が暴落せず、また、本格的な大インフレが発生していない状況」となっているのである。

別の言葉では、「過去の経験則」が通用しない状況となっており、そのために、いろいろな分析が行われているが、今回、興味深かった点は、「IOER(過剰準備預金への付利)」だった。具体的には、「2008年前後のGFC(グローバル金融危機)」以降、約10年間にわたり、「過剰準備預金」に金利が付いており、「このことが、インフレが発生しなかった要因ではないか?」という観測である。そして、この点については、おおむね、私の理解と一致しているが、問題は、やはり、「2001年」に行われた「準備預金」から「当座預金」への変更が指摘できる。

具体的には、この時から、「日銀」の「準備預金」が「当座預金」に名称変更されるとともに、「当座預金の増加が、金融緩和である」と報道され始めたのである。つまり、この前後から、世界的な「金融のコントロール」が顕著になり始めたものと考えているが、現在、「日銀のバランスシート」については、「全体の残高が約533兆円」、そして、「当座預金残高が約393兆円」というように、「国家のGDP」と比較して、前代未聞の規模にまで膨れ上がった状態となっている。

つまり、ほとんどの当座預金に、「0.1%の金利」が付与され、「中央銀行に資金が囲い込まれた状態」となっており、このことは、「実質上の金融引き締め」とも考えられるのである。別の言葉では、「不胎化」と言われる金融政策のことだが、実際には、「国債を買い付けた資金が、再び、日銀に吸い上げられた状況」となっており、このことが、「インフレが発生しない、最も大きな要因」と想定されているのである。

しかし、現在では、「米国の利上げ」により「過剰準備預金への付利」が減少し、また、「預金」に対して「金利」が付き始めており、「資金が、民間市場に流れ始めた状況」となっている。そして、このことが、今後、インフレを加速させるものと考えている。