本間宗究(本間裕)のコラム

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2018.7.13

ミクロとマクロのプルーデンス

現在、海外では、「マクロ・プルーデンス」という言葉が頻繁に使われ始め、今回の「BISの年次総会」でも詳しく説明されていたが、残念ながら、曖昧な内容に終始したようにも感じられた次第である。また、「日銀の解説」では、「ミクロ・プルーデンス」が「個々の金融機関の健全性を確保すること」であり、また、「マクロ・プルーデンス」が「金融システム全体の安定を確保すること」となっている。

そして、「2008年前後のGFC(Great Financial Crisis)」以降、「各国の中央銀行が、積極的に、この問題を取り上げ始めた」とも説明されているが、この理由としては、やはり、「大恐慌のシナリオ」から「大インフレのシナリオ」への変化が指摘できるものと考えている。つまり、「大恐慌シナリオ」とは、「1929年の大恐慌」のように、「国家財政に問題がないものの、民間銀行が連鎖倒産した状況」を意味し、このことが、「ミクロ・プルーデンス」に関する議論を指しているのである。

また、「大インフレのシナリオ」とは、「過去100年間に、30ヶ国以上の国々が経験した国家財政の行き詰まり」、そして、この結果として発生した「ハイパーインフレ」を意味している。つまり、このことが、「マクロ・プルーデンス」という「金融システム」や「通貨制度」の健全性に関する議論のことだが、前述のとおりに、最近では、この点に関する議論や政策が増えているのである。

そのために、「なぜ、GFC以降、このような変化が発生したのか?」を考えざるを得ないが、結局は、「マネーの大膨張」と「金融のメルトダウン」の違いが指摘できるようである。つまり、「GFC」までは、「世界の金融資産が、デリバティブを中心にして急増していた状況」でありながら、その後は、「量的緩和(QE)」などにより、「コンピューターマネー」の部分で、急激な「資産価値の劣化」が始まったものと思われるのである。

別の言葉では、今後、単なる「数字」にすぎない「コンピューターマネー」が、急激に「紙幣」に転換を始める状況が想定されるが、このことは、「金融システム」や「通貨制度」が完全崩壊する可能性を意味しているのである。具体的には、「一国だけでハイパーインフレが発生した」という「過去のパターン」とは違い、今回は、「先進各国の全てで、ハイパーインフレの危機に見舞われる可能性」が存在するために、「マクロ・プルーデンス」などと言っている状況ではないようにも感じているが、実際のところは、「BIS」が、事態の重大さを認識し、責任逃れを始めた可能性が存在するようにも感じている。