本間宗究(本間裕)のコラム
* 直近のコラムは、こちら。
2018.7.23
過去と未来
「過去は見えるが、未来は見えない」、また、「過去の出来事は、全てが理論的に説明可能である」という理解のもとに、今まで、40年以上も金融界に従事してきたが、現在では、この考えに対して、より一層、確信を抱きながら、同時に、新たな反省をしている状況でもある。つまり、「過去の出来事」を分析する場合に、どうしても、既存の理論や常識に捉われがちになる傾向があり、具体的には、「過去のリフレーション政策が、ほとんどの場合、2年程度で終了した」という理解などのことである。
より具体的には、「過去のハイパーインフレ」を研究した時に、ほとんど同じパターンが繰り返されていたために、私自身としては、今回も、同様の展開を想定していたが、実際には、想像を超えた力が働いていたことが理解できるのである。つまり、「過去のハイパーインフレ」については、「一国だけで発生した現象」であり、今回のように「世界全体が、金融危機に陥っている状況」は、人類史上、初めての出来事だったからである。
別の言葉では、「先進各国が協調して、世界の金融市場を操作した事態」というのは、過去の歴史で経験したことがなかったが、今回は、ご存知のとおりに、「金利」のみならず、「為替」や「株価」なども、「先進各国の中央銀行」により、価格が大きな影響を受けているのである。そして、このような行為が可能になった理由としては、「コンピューターマネー」の大膨張が指摘できるが、実際には、現代の通貨が、影も形も存在しない「単なる数字」に変化してしまった状況のことである。
つまり、「コンピューターネットワーク」の中で、「仮想現実」の世界が繰り広げられていたような状況だったが、この点については、「2008年前後のGFC(金融大危機)」に「デリバティブ」と「大量のコンピューターマネー」が残高のピークを付けたことが理解できる。そして、その後の「量的緩和(QE)」で実質上の影響力を失ってきており、今後は、「コンピューターマネー」が「紙幣」に交換される事態も想定されるのである。
また、この点については、「未来は、過去の蓄積により決定される」という展開を想定しているが、実際のところ、過去数十年間の「マネーの大膨張」については、私の常識を、はるかに超える規模だった。その結果として、「インフレの発生」に関して「時間的な遅れ」が生じたものと考えているが、今後は、反対に、私自身が、世の中の展開に追いつかない事態も想定しており、実際には、「国債価格の暴落」が発生した後に、誰もが想像できないほどの大混乱が発生する可能性があるものと考えている。