本間宗究(本間裕)のコラム

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2018.9.3

金融界におけるホーキング放射

現在、「新興国における通貨安の伝染」が問題となっているが、私自身は、この点について、「金融界におけるホーキング放射」が始まった可能性を憂慮している。つまり、過去数十年間に大膨張した「デリバティブ」や「コンピューターマネー」に関して、「ブラックホールのような状況が発生している可能性」のことだが、この点については、詳しい説明が必要だと感じている。

具体的には、「1971年のニクソンショック」以降、「世界のマネーが、価値と形態で激変した状況」のことだが、実際には、ほとんどの部分が、それまでの、「金(ゴールド)」や「紙幣」などの実物商品から、「コンピューターマネー」や「デジタルマネー」などと呼ばれる「影も形も存在しない、単なる数字」へと変化してしまったのである。別の言葉では、「コンピューターネットワーク」という「仮想現実」の世界で、「人々の欲望が、大量のマネーを生み出した状況」でもあるが、問題は、「コンピューターマネーが、金利を低下させただけではなく、人々の意識までをも変化させた状況」でもあった。

つまり、「お金が神様となった時代」のことだが、「金融界のブラックホール」とも言える「デリバティブ」については、「2008年前後のGFC(大金融危機)」で、残高がピークを付け、その後は、「金融のメルトダウン」により、「国債」や「ビットコイン」のバブルを発生させながら、徐々に、「縮小」、あるいは,「消滅」という運命をたどっているものと考えている。

しかし、問題は、「金融メルトダウン」が「紙幣」の部分にまで達した時に、前述の「ホーキング放射」を始める可能性だが、このことは、「デリバティブのバブル」が崩壊した時に予想される「約8000兆円の不良債権」に関して、「大量の紙幣増刷で埋め合わせをする可能性」である。別の言葉では、「世界の金融界において、弱い国々から、信用崩壊が発生する可能性」のことだが、現在では、すでに、「ベネズエラ」や「アルゼンチン」などで、私が危惧する事態が発生しているのである。

そのために、今後は、この動きが、より一層、加速する状況を予想しているが、問題は、「日米欧の先進国」にまで、通貨安、あるいは、通貨不安が伝染した時であり、実際には、「預金や国債が信用できなくなり、株式や貴金属などへ資金が移動する状況」も想定されるのである。つまり、古典的な「インフレ」が発生する事態のことだが、「お金が神様となった人々」には、本当の怖さが理解できない可能性が存在するようにも感じている。