本間宗究(本間裕)のコラム
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2018.10.12
政策転換の催促相場
2018年9月に、「日経平均」は約27年ぶりの高値を付けたが、その翌月には、「世界的な株価の急落」に見舞われた。そして、この原因としては、「世界的な金利上昇」や「米中の貿易戦争」などが指摘されているが、私自身としては、このほかに、「政策転換の催促相場」が指摘できるものと感じている。つまり、このことは、「政策に問題や行き詰まりがある時に、株価の下落などで指摘される状況」とも言えるようだが、実際には、以前の「民間銀行への資本注入」や「日銀による資産買い付け」などの時に、何度か経験したことも、人々の記憶に新しいものと考えている。
そして、「今回は、どのような政策転換が催促されたのか?」が、最も注目すべき点だと思われるが、私自身としては、「デリバティブ」と「中央銀行のバランスシート」の関係性が指摘できるものと感じている。具体的には、「2008年前後のピーク時」に「約8京円」という規模にまで膨らんだ「デリバティブ」が、その後、「量的緩和」などの助けを借りて「約6京円」という規模にまで縮小した状況のことである。
より詳しく申し上げると、「1998年から2008年」までの期間に、「デリバティブの大膨張」が発生し、その結果として、大量の「コンピューターマネー」、あるいは、「デジタル通貨」という「信用本位制の本位通貨」が創られたのである。しかし、その後の展開としては、「100年に一度の大事件」といわれた「リーマン・ショック」により、「デリバティブの収縮」が始まったものと想定されるのである。
そして、この時に用いられたのが、いわゆる「量的緩和(QE)」と呼ばれる金融政策であり、実際には、「中央銀行のバランスシート」を大膨張させることにより「デリバティブのバブル崩壊」を隠す動きだったものと考えている。具体的には、「約10年」という期間にわたり、「超低金利政策」が実施されるとともに、「先進各国の中央銀行が、大量の国債を買い付けた」という状況だったが、現在は、今までの手法に限界点が訪れたものと想定されるのである。
つまり、「当座預金を増やしながら、国債を買い付ける」という「日銀が取ってきた手法」に限界点が訪れた結果として、「金利の抑圧」が難しくなってきたものと考えている。そのために、今後は、「日銀のバランスシート」を膨張させる手段として「紙幣の大増刷」しか残されていないものと思われるが、今回の世界的な株価の下落は、この政策転換を催促するものだったようにも感じている。