本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2019.6.6

FRBの金融政策に関する討論会

6月4日からの2日間、「FRB」が主催し、「金融政策の討論会」が実施されたが、会の冒頭で行われた「パウエル議長の演説」を熟読すると「世界の金融情勢が、きわめて危機的な段階に入っている事実」を改めて認識させられたようにも感じている。具体的には、「金利のELB(Effective Lower Bound)」について詳しく説明しながら、「米国の金利がELBの状態に陥った時に、どのような手段が取れるのか?」に関して「大きな恐怖心を抱いている状況」のようにも思われたからである。

より詳しく申し上げると、「1999年」と「現在」とを比較しながら、「1999年に、日本の金利がELBの状態に陥ったが、一方で、米国金利については、まったく心配する状況ではなかった」、しかし、「現在では、2008年と同様に、米国金利のELBが差し迫った大問題となっている」とも述べられているのである。つまり、「金融危機」に陥った時に、「金利を上げ下げする自由度」のことを「金利のELB」と呼んでいるものと思われるが、実際には、「実質金利の下限」を意味しているものと考えている。

つまり、「1999年のアメリカ」は、「8年間の経済成長、そして、1.4%のコアインフレ」というように、「5.2%の政策金利」に関して、「金利を下げることの自由度」には全く問題が無い状況だったものと想定されるのである。しかし、現在では、ご存知のとおりに、「米中の貿易戦争」などをキッカケにして、再び、「政策金利の低下」を促す圧力が高まっており、「パウエル議長」としては、「どのような手段を取るべきか?」で悩んでいるようにも感じられたのである。

ただし、私自身としては、「金利のELB」という表現が、たいへん気に掛かったが、その理由としては、「パウエル議長のホンネが出た可能性」が指摘できるものと考えている。つまり、「日本」においては、「1999年から、実質上のゼロ金利政策が継続している状況」であるが、この点に関して、「かりに、金利が上昇したとすると、どのような事態が発生したのか?」を想定すると、実際には、「民間銀行」のみならず、「日銀」までもが「金利負担」に耐え切れなかった状況も考えられるのである。

別の言葉では、「パウエル議長」が恐れる「金利のELB」とは、これから想定される「金利の上昇期」において、「どの国の金融機関が、金利負担に関して、もっとも脆弱なのか?」を判断する材料とも感じられたが、この点に関して、最も危惧すべき国は、やはり、「日本」とも言えるようである。