本間宗究(本間裕)のコラム
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2019.7.30
時間と空間のトレードオフ
今年の「BIS(国際決済銀行)の年次総会」では、盛んに「時間のトレードオフ」という言葉が使われていたが、「トレードオフ」というのは、基本的に、「あちらが立てば、こちらが立たず」というような状況を表している。そして、「空間、あるいは、三次元」で使われる場合と「時間、あるいは、四次元」で使われる場合が存在するものと考えているが、具体的には、「現代社会」の象徴とも言える「多くの人々が大都会に移住し、その結果として、地方の過疎化が発生している状況」などは、「空間のトレードオフ」の典型例とも考えられるようである。
また、「アリとキリギリス」の物語は、「時間のトレードオフ」の典型例とも言えるようだが、具体的には、「夏に歌やバイオリンなどで遊んでいたキリギリスが、冬の厳しい時に食料が無くなり、夏に働いていたアリに救いを求めるが、拒否され死んでしまう」というものである。つまり、現在の世界経済のように、「マネーの大膨張」に浮かれ、「パンとサーカスのような生活」に慣れ切った人々が、将来的に、「冬の時代」を迎える可能性がある点を、今回の「BISの年次総会」で危惧されていたのである。
より詳しく申し上げると、「民主主義の弊害」とも言える状況により、「財政赤字」が増え続ける状況のことだが、実際のところ、「政治家や官僚」には、「選挙で勝つために、常に、費用負担が発生しながらも、国民にとって有利な政策を選択する傾向」が存在するのである。そして、「国民」も、「自分の生活」を優先し、「国家財政の悪化などを顧みず、景気をよくする政治家化を選択する」という傾向が存在するが、その結果として、現在では、「金融政策が無力化した」と「BIS」がコメントしなければならないほどに、世界の資金繰りが行き詰まりを見せ始めたのである。
つまり、過去20年間は、「デリバティブの大膨張」、そして、「大量のコンピューターマネーの存在」により、「世界中の人々が、キリギリスのような生活」を送ってきたのだが、今後、「ペーパーマネー」が復活する事態に陥った時に、一挙に、冬の時代が到来するものと想定されるのである。別の言葉では、以前から申し上げている「お金」が「神から紙へ変化する事態」のことだが、今回の「時間的なトレードオフ」については、「人類史上、未曽有の規模だったようにも感じている。そのために、現在、私が危惧していることは、「これから、どれほどの反動が発生するのか?」ということであり、この点には、決して、予断が許せないものと感じているが、今回の「BISの年次総会」を見ていると、時間的な余裕は、完全に消滅したようにも感じている。