本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.1.13

経済成長のメカニズム

現在の「世界的な混迷」の要因として、現代人が、「経済成長のメカニズム」を理解できていない点が挙げられるようだが、具体的には、「実体経済」と「マネー経済」、あるいは、「商品」と「マネー(お金)」に関して、「性質的に、どのような違いがあるのか?」が理解できていない点である。つまり、「商品」や「実体経済」というのは「フロー」であり「次の取引が行われるかが保証されていない状況」でありながら、一方で、この時に使用された「マネー」は「ストック」という「所有者が交代しながらも、利潤により、残高が徐々に増加する性質」を持っているのである。

その結果として、「西暦1200年」から始まった「西洋の時代」の最終局面では、「お金が最も大切である」という認識を持つ「資本主義」が形成されたわけだが、この点に関して、最も注目すべき事実は、やはり、「1971年以降に誕生した、信用本位制という通貨制度」だと考えている。つまり、「過去50年弱の期間に、商品とマネーとが、具体的に、どのような変化を遂げたのか?」を考えることにより、「これから、どのような社会、あるいは、時代が形成されるのか?」が見えてくるものと思われるのである。

より具体的には、最後の段階で誕生した「デリバティブ(金融派生商品)」に関して、「商品」と「マネー」との「二面性」を理解することでもあるが、実際には、「2008年のリーマンショック」前後に、「商品」の特徴である「フロー」の性質が失われ、その後は、「マネー」の特徴である「ストック」の性質が前面に出たものと思われるのである。しかも、この点に関して、最も重要なポイントは、「より巨大な新商品が誕生しない限り、すでに存在しているマネーが堕落を始める状況」とも言えるのである。

つまり、「マネー残高」の増加に伴い、「より付加価値の高い商品」を生み出す必要性が存在するわけだが、実際には、今回の「デリバティブ」以降、「経済成長を促進させる商品」が誕生していないことも見て取れるのである。別の言葉では、「約8京円」という規模にまで膨れ上がった「デリバティブ」を上回る規模の「商品」については、実際のところ、「誕生が、すでに不可能な状況」とも考えられるのである。

そして、結果としては、「ケインズ」が指摘するとおりに、「通貨の堕落」がもたらす「破壊の力」が世界的に働き始めた状況となっているようだが、基本的には、「東洋の時代」を表す「唯心論」、そして、「市場経済」から「共同体」への大転換が、今後、急速に進展する状況を想定している次第である。