本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.1.13

ROE神話の暴走

現在、「ROE神話の暴走」が危惧されているが、私自身としては、以前から、「当期純利益÷株主資本」という計算式で算出される「ROE(株主資本利益率)」に対して、大きな疑問を抱いていた。つまり、「株式の価値」については、基本的に、「どれほど独創的な商品や仕組みなどを生み出し、また、どれほど多くの人々に受け入れられるのか?」が、最も重要なポイントと考えていたからである。

別の言葉では、「負債」を増やし、「株主資本」を減らすことにより、「ROEが操作される可能性」を危惧していたわけだが、実際には、世界全体で、「マネーの大膨張」が発生し、その結果として、「行き過ぎた金融資本主義」の時代が形成されたものと考えている。つまり、「お金が神様となった時代」が産み出されたわけだが、このような状況下では、「権力の暴走」という「お金を持った人々が、どのような無謀な意見でも押し通す状況」となったことも見て取れるのである。

あるいは、「無理が通れば、道理が引っ込む」という諺のとおりに、「本末転倒した社会」が形成されたわけだが、実際には、「ゼロ金利が当たり前」、あるいは、「お金を借りた人が、反対に、金利を貰う状況」までもが発生しているのである。つまり、「石が浮かび、木の葉が沈む」というような状況のことでもあるが、現在では、「この点を不思議に思う人までもが、ほとんど消滅した状態」とも言えるのである。

そして、単純に、「リスクオン」や「リスクオフ」などの言葉を使用し、「何が、本当のリスクなのか?」が理解されない状況となっているようだが、この点に関して、最も重要なポイントは、やはり、「ストック」と「フロー」との関係性だと感じている。つまり、「実体経済」が「フロー」であり、「将来的に、取引が継続される保証がない状況」でありながら、一方で、「マネー経済」については「ストック」という「残高」のために、「お金は、利益を求めて動き回る状況」となっているのである。

しかも、この点に関して、最も注目すべき点は、現在の「マネー経済」については、「約10京円」という「実体経済の約10倍」という規模となっており、「今後、このマネーが、どこへ動くのか」により、世界全体が、大きな影響を受けることが見て取れるのである。つまり、今までは、「マネー経済」の中で暴れまわっていた状況だったものが、最近では、「実体経済」へと流れ始めた可能性があり、この結果として想定されることは、「未曽有の規模での大インフレ」とも言えるようである。