本間宗究(本間裕)のコラム
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2020.2.13
迷走するFRBの資産政策
現在、「FRBの資産政策」に対して、世界の注目が集まっているが、この点に関して最も重要な態度は、「決して、三次元の経済学を信用しないこと」であり、実際には、「現在の状況だけの議論」を避けることである。そして、この理由としては、「FRBが、なぜ、現在、短期国債の買い付けを行っているのか?」、あるいは、「なぜ、昨年の9月に、突如として短期金利が上昇したのか?」などが理解されていないために、結果として、「すべてが不毛の議論に終始しがちの状況」とも思われるからである。
そのために、現時点で必要なことは、「四次元の経済学」、すなわち、「歴史を遡り、 具体的な数字で、現在の混乱の発生原因を理解する態度」であり、実際には、「最低でも1971年のニクソンショックにまで時間を遡り、その後、どのような展開が繰り広げられたのか?」を、具体的な数字で研究することである。そして、このような観点から、現在の「FRBの資産政策」を眺めると、きわめて明確な結論が導かれるようだが、実際には、「民間部門が保有するデリバティブ」が危機的な状況に陥っており、その結果として、「金融システムが、世界的に崩壊する可能性」である。
つまり、「過去10年余りの量的緩和(QE)」については、基本的に、「民間の金融機関が保持していたデリバティブ」に対して「どのような影響を与えたのか?」を理解する必要性があるものと考えている。具体的には、「2008年前後のピーク時に、約8京円という規模にまで大膨張した状況」が、その後、「約2京円の残高縮小」に直面した展開のことだが、この時に発生した変化は、「想定元本の約10分の1と推測される不良資産」を処理するために、「約2000兆円の資金」が「世界的な中央銀行の資産増加によって賄われた状況」だったものと想定されるのである。
別の言葉では、「国民の資産を借りて国債を買い付け、結果として、超低金利状態を作り出した状況」のことでもあるが、この点については、「コンピューターマネーが存在し、かつ、国民が気付かない限り、この手法が有効だった」とも考えられるのである。しかし、「昨年の9月17日」に発生した「翌日物金利の急騰」については、「従来の手法が行き詰った状況」を表しているものと推測されるのである。
その結果として、「FRB」は、「一時しのぎの手法」である「短期国債の買い付け」に頼ったようだが、現在では、「1991年のソ連」と同様に、「紙幣の増刷」以外に「打つ手」が無くなった状況とも想定されるのである。