本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.2.23

日銀保有国債の大量償還

現在、「日銀が保有する国債の大量償還」が危惧されているが、この点に関する問題は、「本当の危機」が理解されていないことであり、私自身としては、「二つの危機」を憂慮している。つまり、最初が、「国債の償還時に、どれほどの損失が日銀に発生するのか?」という点でもあるが、実際には、現在、「日銀」が保有している国債の多くが、「マイナス金利の状態」となっており、そのために、これから想定される事態としては、「国債の償還時に、多額の損失が計上される可能性」とも言えるのである。

 より詳しく申し上げると、「保有している長期国債」については、すでに、「低価法から原価法へ」という「会計処理の変更」により、「保有期間中の損失」が発生しない状況となっているが、問題は、「償還時に、この損失が表面化する状況」とも考えられるのである。つまり、今後は、「どれほどの金額の国債が、どのようにして償還されるのか?」に、大きな注意を払う必要性があるものと思われるが、より大きな注目点は、「日銀トレードが、今後も継続が可能なのか?」だと考えている。

別の言葉では、「日銀が、より高い価格で、国債を買い取ってくれる」という「安心感」が存在したために、今まで、「日銀トレード」が可能だったものと考えられるのである。つまり、「民間の金融機関が、高い価格でも、平気で、新発国債を応札してきた異常事態」については、「国債価格が、長期間、上昇を続けてきた」という点も指摘できるが、実際のところは、「民間金融機関が一時的に国債を保有しても、価格が下落するリスクが、ほとんど存在しなかった」という状況が指摘できるものと思われるのである。

しかし、今後は、「民間の金融機関が、今までと同様に、国債の入札を継続できるのか?」、そして、「日銀は、今までと同様に、国債の買い付けが可能なのか?」という「二つの疑問点」が出始めるものと考えられるのである。つまり、今までは、「量的緩和(QE)」の名のもとに、「日銀が、民間金融機関を中心に、国民から資金を借りて、無謀な国債の買い付けを行ってきた」という状況だったが、今後は、この点に関して、さまざまな問題が発生するものと想定されるのである。

具体的には、やはり、「日銀」が、「最後の手段」である「紙幣の増刷」に頼らざるを得ない状況のことだが、この時に予想される事態は、「1991年のソ連」などと同様に、強烈な「円安」、そして、「金利の急騰」であり、また、現在の「金(ゴールド)価格の急騰」については、この点に関する「予兆」だと考えている。