本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.4.7

本当の信用創造

「経済学」や「マネー理論」を理解するうえで、最も頭を悩ました問題の一つは、「信用創造」という言葉の正確な理解であり、また、「実体経済」と「マネー経済」との関係性だった。つまり、「実体経済」には「フロー」の性質があり、今回の「コロナ・ショック」からもお分かりのように、「既存のビジネスは、ほぼ瞬間的に消滅する可能性」を秘めているものの、一方で、「マネー経済」については、「ストック」の性質を有するとともに、根本の「信用」が存在する限り、永遠に膨張を続ける状況も理解できるのである。

そして、「マネー」には、「紙幣の増刷」によって引き起こされる「ハイパーインフレ」が発生するまでの期間、「マネーの膨張」、すなわち、「残高が増え続ける性質」が存在するのだが、実際には、このことが、誤って「信用創造」という言葉で説明されていたようにも感じられるのである。つまり、「信用が減少している状況下で、信用が増大しているような錯覚」をもたらした可能性のことだが、この点を理解するためには、やはり、「村山節氏」が発見した「文明法則史学」に頼らざるを得ないものと感じている。

具体的には、「800年ごとに、西洋の物質文明と、東洋の精神文明とが交代している事実」のことだが、現在は、「西暦1200年前後」から始まった「西洋の時代」が、「最後のマネー膨張を終えた段階」だと考えている。つまり、「2008年のリーマンショック」が「マネー膨張の最終段階」だったものの、実際には、「既存の経済理論の未熟さ」などの要因により、「マネー膨張の実情が理解されない状態」だったものと想定されるのである。

そのために、この点を再考すると、本来は、「西暦400年から1200年までの東洋の時代」に、「目に見えない信用」が築かれたものと考えられるのである。つまり、聖書で述べられている「人は神と富とに兼ね仕えることができない」という言葉のとおりに、「西洋の時代は富に仕え、その結果として、マネーの膨張が発生した状況」だったものの、一方で、「神に仕えた東洋の時代」においては、「本当の信用創造」、すなわち、「人々の相互信頼感」が醸成された時代だったようにも感じられるのである。

そして、この点については、「今後の数年間に、どれほどの大インフレが発生するのか?」を見ることにより、検証が可能なものと考えているが、現時点で、間違いなく言える事実は、やはり、「信用が失われた社会の恐ろしさ」だと感じている。つまり、現在では、「政治家」や「官僚」までもが、ほとんど信用できないような、極めて異常な社会が形成された状況のようにも感じられるのである。