本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.4.14

お金の役割

古典的な貨幣論では、「お金の役割」として、「価値の尺度」、「交換手段」、そして、「価値貯蔵手段」の三点が指摘されているが、現在では、すでに、「交換手段」の面において、「マネーの機能不全」が始まっているものと考えている。つまり、「お金は、必要な商品と交換できて、初めて役に立つ」という事実のことだが、現在では、「マスク」や「貴金属」などのように、「現物の不足により、交換ができなくなっているケース」が散見される状況となっているのである。

別の言葉では、「大膨張したマネー経済」、そして、「縮小する実体経済」の結果として、現在では、「大量のマネー」が存在するものの、多くの人々は、いまだに、「預金」や「現金」、あるいは、「金融商品」などの資産として保有しているのである。つまり、「これらの資産を持っていれば、いつでも、実物商品に交換が可能である」という錯覚を抱き、「ゼロ金利やマイナス金利でも、預金や国債などの資産を保有し続けてきた状況」だったが、現在では、徐々に、「マネーの交換機能」が働かなくなり始めているのである。

そして、今後は、この事実に気づいた人から、「本当に必要な商品」、そして、「本当に安全な資産」への切り替えが始まるものと思われるが、「人々の価値観」が、「お金儲けよりも、命を維持すること」に大転換した現在では、「ほとんどの商品が、不要不急なものだった可能性」も指摘できるようである。つまり、今回の「コロナ・ショック」には、「人々の認識」を改める効果も存在したようだが、一方で、私自身としては、これから想定される「本格的な大インフレ」に対する「予行演習」ではないかと感じている。

具体的には、「食料」や「トイレットペーパー」などの「生活に必要な物資」に関して、今後、徐々に、「交換機能」が失われ、また、「価格の上昇」により、「価値貯蔵手段」としての機能が減少する事態が想定されるのである。つまり、「大インフレ」が始まることにより、「価値の尺度」が変化する状況のことだが、この点については、すでに、「金価格の上昇」が、事実を証明しているものと考えている。

このように、現在では、「神様となったデジタル通貨」に関して、さまざまな「機能不全」が発生し始めた状況ともいえるようだが、この事実が、世界的に理解されるのは、「紙幣の大増刷」が実施されるときだと考えている。つまり、このことが、「神から紙への変化」を意味しているが、今回の「コロナ・ショック」については、今後、「紙幣の増刷」、あるいは、「インフレ政策」に対する言い訳として利用される可能性も考えられるようである。