本間宗究(本間裕)のコラム
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2020.4.23
原油のマイナス価格
4月21日に発生した「原油のマイナス価格」には、たいへん驚かされたが、この原因としては、結局のところ、「世界的な本末転倒状態」が指摘できるものと考えている。つまり、「実体経済」と「マネー経済」、あるいは、「先物」と「現物」との関係性、すなわち、「本末転倒状態」のことだが、本来は、「原油の現物取引」が「主」であり、将来的な価格変動に保険をかける役割の「先物」は「従」の立場に位置していたのである。
しかし、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制」、そして、「過去20年余りの超低金利状態」の状況下では、「マネーの大膨張」により、「先物」が「主」、そして、「現物」が「従」の立場に変化したのである。つまり、「取引の絶対量」において、「先物が現物を凌駕する状態」となり、また、「金融界のブラックホール」の内部で、全ての問題が封印されてきたような状況だったのである。
しかし、昨年の「9月17日」以降、「資金の逆流」が始まり、今まで隠されていた「さまざまな矛盾」が表面化したものと思われるが、その一つが、今回の「原油のマイナス価格」だったのである。つまり、ほとんどの「先物取引」には「期日」が存在し、「ロールオーバー」という「限月の入れ替え」が行われるが、今回は、「原油のカラ売りをしていた人々が、先物の買戻しをせず、現物の受け渡しを選択した状況」だったのである。
その結果として、「先物の買い手」は、「買い手の不在」の結果、「保有残高の投げ売り」を選択せざるを得なかったわけだが、現在、海外で注目されていることは、「金(ゴールド)」の市場で、反対の動きが発生する可能性である。つまり、現在は、「金の現物」が少ない状況下で、「大量の先物売り」が存在するために、近い将来、「限月交代時に、金の大量買いが発生する可能性」が考慮されているのである。
より具体的には、「ショートスクイーズ」という「金を空売りしていた人々が、買戻しに困る状況」のことだが、実際には、「先物で買っていた人々が、現物の受け渡しを要求した時に、現物が存在しない状況」のことである。そして、結果としては、「価格の急騰」が想定されるわけだが、この点については、今後、「大規模なマネー経済」と「約10分の1の実体経済」との間で、より衝撃的な展開が発生するものと考えている。つまり、「世界の中央銀行が、大量の紙幣を発行するものの、交換できるだけの実物資産が存在せず、結果として、さまざまな商品価格が急騰する事態」のことだが、本来は、このことが、「インフレ(通貨価値の下落)」と呼ばれていたのである。