本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.5.16

パウエルFRB議長の苦悩

弁護士出身の「パウエルFRB議長」にとって、今回の「コロナ・ショック」は、「未曽有の金融政策を実施するための言い訳となった事件」のようにも感じているが、実際のところ、「FRBのバランスシート」については、「昨年の9月末が約3.9兆ドル(約417兆円)」だったものが、「2020年の5月半ばには、約7兆ドル(約746兆円)」という規模にまで、一挙に大膨張していることも見て取れるのである。

つまり、「金利の低下」を促進させるために、「ありとあらゆる所から資金を借り入れて、国債の大量買い付けを実施している状況」とも言えるが、この時の注目点は、「資金繰りに関して、急速な変化が発生する可能性」だと考えている。具体的には、昨年の9月から現在まで、「約3.1兆ドル(約330兆円)」もの資金を借り入れてきたわけだが、内容としては、「地方連銀や国家」などが「主要な借入先」だったことも理解できるのである。

しかし、現在では、「紙幣の増刷」へと「借入先」が変化しており、この結果として、海外では、「インフレの発生」を警告する意見が急増しているのである。つまり、「インフレの大津波」が、間もなく、世界全体を襲い始める可能性が危惧されているわけだが、この点に関して、最も憂慮すべき事態は、やはり、「紙幣は、コンピューターネットワークの中を流れることができない」という「厳然たる事実」だと考えている。

別の言葉では、私が憂慮し続けてきた「金融界の白血病」のことでもあるが、基本的には、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制という通貨制度」や「現代の通貨が、目に見えないコンピューターマネーに変化した事実」、そして、「商品と貨幣の性質を併せ持った金融商品の特殊性」などが理解されない限り、今後の大混乱への対応が難しくなる状況も想定されるのである。

つまり、今回の「コロナ・ショック」は、今後の「金融大混乱」に対する「予行演習」だと考えているが、「パウエル議長」としては、「経済や金融に対する基本的な理解」が不足している状況のために、「これから、どのような対応を取るべきか?」について、大きな苦悩を抱えているものと思われるのである。また、「実体経済だけの分析」に終始し、「海外の専門家の意見」を鵜呑みにしがちな日本人にとっては、より一層、困難な状況が訪れるものと思われるが、この点に対する解決策としては、やはり、「文明法則史学」を理解することであり、具体的には、「東洋の時代が到来する可能性に関して、根本的な価値観を徹底的に研究すること」に尽きるものと感じている。