本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.6.26

独ワイヤーカードの不正会計問題

ドイツにおける「ワイヤーカード社の破綻」は、今後、大きな波紋を広げるものと思われるが、この点に関して理解すべき事実は、やはり、「デジタル通貨のバブル」であり、また、その裏側に存在する「デリバティブのバブル」だと考えている。つまり、1980年代の初頭から始まった「世界的な金利の低下」については、「デリバティブの誕生と成長」が根本的な要因であり、また、「1999年」から始まった「日本の実質的なゼロ金利」は、「デジタル通貨の大膨張」が重要な役割を持っていたのである。

別の言葉では、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制」という通貨制度では、「約50年間にわたり、きわめて異常な超低金利状態が醸成された」という状況だったが、現在では、重要な分岐点に差し掛かっていることも見て取れるのである。具体的には、いまだに「約6京円」もの残高が存在する「デリバティブ」に関しては、ほとんどが「金利関連の金融商品」のために、今まで、「世界各国の政府が、ありとあらゆる手段を駆使して、金利の上昇を防いできた」という状況だったのである。

しかし、「2019年の7月19日」に発生した「短期金利の急騰」が意味することは、「デジタル通貨の枯渇」であり、その後、「米国のFRB」は、「地方連銀や中央政府などから、巨額の資金を借り入れて国債を大量に買い付け、強引に金利の低下を目論んできた」という展開となったのである。つまり、「時間稼ぎ」と「問題の先送り」に奔走してきたわけだが、今回の「独ワイヤーカードの不正会計問題」については、世界中の人々に、「デジタル通貨バブルの崩壊」を知らせる効果が存在したようにも感じている。

より具体的には、「日米欧の中央銀行」が、すでに「紙幣の増刷」を始めている事実に対して、今後、世界中の人々が気付かされるものと思われるが、実際には、「実体経済」と「マネー経済」との比較のみならず、「お金(マネー)の性質」についても、急速に理解が深まる状況が想定されるようである。

つまり、「コロナ・ショック」のような状況が、今後、「世界の金融界」で発生する可能性のことだが、実際には、「超低金利状態の反動」が発生するものと想定されるのである。別の言葉では、「金利の急上昇により、世界の金融界が、きわめて大きな影響を受ける可能性」のことだが、この時に必要とされることは、やはり、古典的な「インフレ(通貨価値の下落)」を理解することであり、私自身としては、このことが、「今後の勝者」を決定する要因の一つになるものと考えている。