本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.7.8

「最後の貸し手」から「最後の買い手」へ

6月30日に開催された「BIS(国債決済銀行)の年次総会」の内容を見ると、現在の「危機的な状況」が、まざまざと浮かび上がってくるようにも感じられたが、今回、驚かされたことは、「現在の状況が、第二次世界大戦時に酷似している」という説明だった。つまり、「多額の戦費に悩まされた国々が、国民にインフレ税を課した状況」のことだが、この点については、「BIS」が、私と同様に、「現在は、世界的な金融戦争が終戦を迎えようとしている段階である」と考えている状況とも言えるようである。

より具体的に申し上げると、今回の金融戦争が、実は、「第三次世界大戦」であり、実際には、「武力による領土の奪い合い」ではなく、「知恵による資金の奪い合い」だった可能性のことだが、現在では、「金融戦争そのものが終戦を迎えている段階」とも言えるのである。つまり、今回の年次総会では、世界各国の中央銀行が、「最後の貸し手」から「最後の買い手」へと変化したと説明されているが、この時の問題は、「中央銀行が、今後、どのようにして買い付け資金を調達するのか?」という一点とも言えるのである。

別の言葉では、「デジタル通貨」の存在により、今までは、「大量の国債や株式、あるいは、社債」などまでをも買い付けることが可能だったが、現在では、この方法に限界点が訪れたことも見て取れるのである。つまり、第二次世界大戦の末期に実施された「インフレ課税」、そして、「借金を棒引きにする政策」というのは、「紙幣の増刷で、ハイパーインフレを発生させる方法」を指しているのである。

そして、今回は、「中央銀行の中央銀行」である「BIS」の年次総会で、このような発言がなされたわけだが、今回、最も注目された点は、やはり、「コロナ・ショック」であり、実際には、私と同様に、「実体経済のマヒ状態」が、今後、「マネー経済のマヒ状態」へ移行する可能性のことだった。つまり、今までは、「デジタル化」という「仮想現実の世界」で、「政府や中央銀行は、思いのままに市場を操作できた」という状況だったわけだが、現在では、これらの全てが限界点に達したものと考えられるのである。

その結果として、今後は、「大量の紙幣増刷」が実施され、世界中の人々が、目に見えない「インフレ税」を払わされる状況が想定されるわけだが、残念ながら、現在でも、この仕組みが、世界的に理解されていないものと考えられるのである。つまり、今回も、「第二次世界大戦」の時と同様に、「戦後の混乱にまぎれて、国家の借金が、いつの間にか、実質上、消滅していた」という展開が想定されるようである。