本間宗究(本間裕)のコラム
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2020.8.7
本当のインフレ
今から40年ほど前、アメリカの大学で受けた「経済学の試験」では、問題が一つであり、教科書の持ち込みが可能な状況でもあった。具体的には、「インフレとは何か?」という設問だったが、40年近くが経過した現在、改めて、この問題を考えると、心から納得できる答えが導き出せたものと感じている。つまり、当時は、「インフレやデフレは貨幣的現象である」という「教科書的な答え」は理解していたものの、「貨幣と商品との関係性」を意味する「貨幣的現象」が理解できていなかったようにも思われるのである。
より具体的には、「過去200年間に、どのような商品が誕生し、また、どのような通貨が発行されたのか?」が理解できていなかったために、「理屈の無間地獄」という「三次元の落とし穴」に陥った可能性のことである。つまり、「理屈と膏薬は、どこにでも付く」という言葉のとおりに、「どのような意見にも、一部には真実が隠されている」という状況であり、その結果として、「群盲、象を撫でる」という「お釈迦様の教え」のとおりに、「自分の意見が正しい」と信じる人々の争いが、経済理論で発生した状況のことである。
そして、この問題の解決法としては、「19世紀が、一次産業、そして、初期の二次産業が発展した段階」であり、また、この時に、「金貨本位制」という「きわめて少量の通貨で世界経済が賄われた実情」を理解することだと考えている。つまり、「19世紀の半ば」に発生した「米国のゴールドラッシュ」の時には、「実体経済」に変化がない状況下で、「通貨の供給量」が増えたために、「物価の上昇」に繋がった展開だったのである。
また、戦後の世界では、最初に、「工業製品などの二次産業」が発展し、「預金」や「債券」などの「お金(マネー)」が供給されたわけだが、その後は、「サービス品などの三次産業」、そして、「デリバティブを中心とした金融商品」が産み出された状況だったことも見て取れるのである。つまり、「1971年のニクソンショック」以降、「デジタル通貨」が発展したわけだが、この時の問題点は、「インフレ率を計測する指標」において、「一次産品」や「二次産品」だけが対象になっている事実である。
このように、現在では、「多様な商品」と「多様な通貨」が存在するために、本当の意味での「インフレ率」を計測するためには、「全ての商品」と「全ての通貨」との関係性を考慮する必要性が存在するものと考えている。そして、この観点から、今後、最も注目すべきことは、「デジタル通貨」が完全に消滅し、「大量の紙幣」が発行されたときに、「どの商品に、人々の資金が殺到するのか?」ということだと感じている。