本間宗究(本間裕)のコラム
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2020.8.3
断末魔の叫び声をあげる世界のマネー
現在、日本国内や海外で、頻繁に見受けられる質問は、「コロナ・ショックで実体経済がマヒ状態となっていながら、なぜ、株式や貴金属の価格が上昇を続けているのか?」というものである。つまり、「実体経済」だけを見て、「マネー経済」が理解できず、また、「デリバティブという金融商品の性質」が解明できていないために、理論的な混乱が発生し、このような質問が出ている状況とも思われるのである。
そして、今後の展開としては、「1971年のニクソンショック以降、どれほど巨額のマネー(お金)が創り出されたのか?」が理解できない限り、「より一層、訳の分からない相場が継続する状況」も想定されるようである。別の言葉では、「マネーの性質」を理解すれば、「現在の相場が、きわめて単純明快な展開となっている事実」に気付くものと思われるが、実際には、私自身においても、「最後の落とし穴」とも言える「インフレ指数の盲点」に気付くまでに、「約20年」という時間を必要としたのである。
より詳しく申し上げると、「デリバティブの大膨張」と「金融のメルトダウン」の仕組みについては、「人類史上、初めての出来事」のために、過去の教科書が、全く役に立たず、独自の理論を生み出す必要性が存在したのである。そして、結論としては、「通貨と商品の性質」を深く理解することにより、現在が、「古典的なインフレ相場の再来」、あるいは、「世界のマネーが断末魔の叫び声を上げている状態」とも理解できたのである。
つまり、現在のような「巨額のデジタル通貨」が誕生するまでには、「西ローマ帝国の崩壊以降、約1600年の時間が必要だった」という状況のことである。そして、現在は、当時と同様に、「財政赤字」と「インフレ」により、「現代の資本主義文明」そのものが崩壊の危機を迎えている状態とも感じているが、実際には、多くの人々が、「世界全体で、デジタル通貨が紙幣に交換されようとしている事実」を理解した結果として、大量の資金が、実物資産に流れ始めている状況とも言えるのである。
より具体的には、1971年から始まった「信用本位制」という通貨制度が、現在、崩壊を始めており、そのために、今後は、「1923年のドイツ」や「1945年の日本」、あるいは、「1991年のソ連」などで発生した「インフレ(通貨価値の減少)」を、はるかに上回る規模の「世界的な大インフレ」が想定されるのである。しかも、現在では、この「蠢(うごめ)き」が、徐々に始まっている段階、すなわち、「インフレの大津波」が世界を襲い始めた状況のようにも感じている次第である。