本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.9.1

ハイパーインフレの発生メカニズム

古典的な経済理論に「フィッシャーの交換方程式」が存在するが、具体的には、「MV=PT」、すなわち、「M(貨幣の増量)」と「V(貨幣の流通速度)」を掛け合わせた数字が、「P(価格)」と「T(商品の取引量)」を掛け合わせた数字と同じになるというものである。そして、この方程式を、現在の状況に当てはめると、「M」に関しては、「急増」を意味する「デジタル通貨から紙幣への大転換」が予想されるとともに、「V」に関しても、同様に、「紙幣を受け取った人々が、慌てて、商品に交換する状況」が考えられるのである。

しかも、「T」については、「急減」を意味する、従来の「金融商品」が実質的に消滅する展開が想定されるために、結果としては、今後の「P」について、未曽有の規模での上昇も想定されるのである。つまり、「国債価格の暴落」、あるいは、「金利の上昇」などにより、「中央銀行」のみならず、「国家の財政」までもが、あっという間に、破たん状態に陥る展開のことであり、このような状況下では、当然のことながら、「人々は、預金を解約して、実物資産への投資に向かう状況」も予想されるのである。

つまり、過去100年間に、30か国以上で発生した「ハイパーインフレ」については、すべての場合において、「大量に発行された紙幣が、食料品など、小さな規模の実物資産に向かった」ということが、主な原因として挙げられるのである。しかも、今回は、世界全体が同様の状況となっており、そのために、「これから、どれほどの規模で、ハイパーインフレが発生するのか?」については、全く予断を許さない状況となっているのである。

別の言葉では、これから想定される「最大のブラックスワン」、すなわち、「ほとんどの人が予想していない状況下で発生する大事件」としては、やはり、「金融界の白血病」が考えられるようである。つまり、「大増刷された紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができずに、現在の金融商品が完全消滅する可能性」のことだが、実際のところ、このような状況下では、「デジタル革命」も意味を失うものと考えている。

より具体的には、現在の「GAFA」についても、きわめて大きな投資リスクが存在するものと思われるが、この点については、今後、世界的な「国債価格の暴落」が発生した時に、はっきり見えてくるものと感じている。そして、タイミングについても、たいへん近い状況とも思われるが、実際のところ、現在は、「この事実に気づいた人から、徐々に、貴金属投資を始めている状況」であり、今後は、「この動きが食料品にまで波及する可能性」も存在するものと考えている。