本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.10.3

ギブソンの逆説

最近、海外で注目され始めた言葉に「ギブソンの逆説」がある。具体的には、「金利と物価上昇率は正比例の関係にある」という理論であり、実際には、今から100年ほど前に、銀行家の「ギブソン(1866年~1957年)」が発見し、経済学者の「ケインズ」が広めたものである。そして、「なぜ、現在、この理論が注目され始めたのか?」については、「FRBのパウエル議長」が、「今後の物価上昇には、金利の引き上げで対応する」とコメントしたからである。

つまり、今後、典型的な「インフレ政策」が実施される可能性を、世界中の人々が認識し始めたものと思われるが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。具体的には、「当時の金融システム」が、「金貨本位制」のもとに、「誕生したばかりの中央銀行」と「脆弱な民間銀行」が存在した状況だったからである。別の言葉では、「金貨」と「僅かな金額の預金、そして、兌換紙幣」などが存在したために、当時は、「物価の上昇時に、金利の上昇で対応する手法」が取られていたことも理解できるのである。

しかし、一方で、現在は、私が提唱する「信用本位制」のもとで、「天文学的な数字」にまで膨れ上がった「デジタル通貨」や「デリバティブなどの金融商品」が存在するのである。そして、今までは、「金融界のブラックホール」の中で、「デジタル通貨がデリバティブという金融商品に投資されていた状況」でもあったが、現在では、「紙幣の増刷」が始まるとともに、「実物商品への投資」が増えつつある段階となっているのである。

つまり、「貴金属」や「食料品」などの「一次産品」に対して、世界の資金が流れ始めた結果として、旧来の「インフレ指数」が上昇を始めたわけだが、この時の対処法としては、やはり、「金利の上昇」しか存在しない状況とも言えるのである。その結果として、冒頭の「ギブソンの逆説」が注目を浴び始めているわけだが、この点については、今までに申しあげたとおりに、「インフレ指数の盲点」や「ハイパーインフレの発生メカニズム」を理解する必要性があるものと考えている。

別の言葉では、「三次元の経済学」では解明できなかった「マネー理論」に関して、「時間の推移とともに、どのような変化が発生したのか?」を考える「四次元の経済学」を応用する状況のことだが、今回は、この点に加えて、「文明法則史学」という「800年に一度、東西文明が交代する」という展開が理解できない限り、今後の大混乱への対応が難しくなるものと感じている。