本間宗究(本間裕)のコラム
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2020.10.4
デリバティブの時限爆弾
デリバティブの時限爆弾
そして、私自身が想定する「現代版の平家物語」としては、「習近平氏」と「菅首相」が指摘できるものと思われるが、基本的には、「香港の国家安全法」と「日本学術会議への任命拒否」が、将来的に、「虎の尾を踏んだ事件」と評価される可能性が高くなったものと考えられるのである。ただし、この点については、現在、確固たる評価が定まっていない状況であり、このことが、前述のとおりに、「歴史の渦中」に存在する我々にとっては、「将来の展望」が見えない状況を意味しているのである。
つまり、「西暦2000年」に「約8000兆円の残高」だった「デリバティブ」については、その後、「2008年前後に約8京円にまで大膨張した」という展開だったのである。そして、ピーク時に発生したのが、いわゆる「2006年から2009年のGFC(金融大混乱)」だったが、その後は、ご存じのとおりに、「日米欧の中央銀行が国債を買い付けて、超低金利状態を継続した」という状況でもあったのである。
別の言葉では、「デリバティブの解消」のために「中央銀行のバランスシートを拡大し、超低金利状態を維持した展開」のことだが、この間に、実際に起こったことは、「デリバティブの想定元本が約2京円の減少を見せた状況」である。つまり、「想定元本の約1割」と想定される「不良債権」を解消するために、「日米欧の中央銀行が、約2000兆円ものバランスシート残高を積み上げた状況」のことである。
しかし、現在の問題は、従来の手法である「デジタル通貨の借り入れによる国債の買い付け」に限界点が訪れ、その結果として、「紙幣の増刷」が、徐々に、始まったことである。つまり、古典的な「インフレ政策」が、世界的に実施され始めたわけだが、「1971年のニクソンショック」から始まった「新たな通貨制度」、すなわち、私が提唱する「信用本位制」に慣れ切った人々にとっては、「マネーの性質」、あるいは、「マネーの原点」が、ほとんど見えなくなっている状況とも言えるのである。
具体的には、以前から指摘し続けてきたように、「紙幣は、コンピューターネットワークの中を流れることができない」という厳然たる事実のことだが、今後の注目点は、「この事実に気付いた人から、現物資産への換物運動が始まる可能性」だと考えている。つまり、「目に見えないデジタル通貨」が「裸の王様」であると気付いた人々が、慌てて、「貴金属」や「割安株」、そして、「食料品」などを買い漁り始める状況のことだが、この点については、「1868年の明治維新」、あるいは、「1945年の敗戦」などと同様に、「ある日突然に、歴史的な大転換が発生する可能性」が高まっている状況のようにも感じている。