本間宗究(本間裕)のコラム
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2021.11.22
民の信用
四書五経の一つである「論語」では、「政治にとって必要なものは、軍備と食と民の信用である」と言われている。そして、「この三つのうち、最初に何を取り去ることが可能か?」と問われた孔子は、「軍備である」と答え、また、「次に可能なものは食である」と答えたそうである。つまり、「飢饉などの食の問題は頻繁に起こることでもあるが、信用が失われ、国民同士が恨み合い、殺し合うような内戦状態については、政治家が最も避けるべき事態である」と言いたかったものと思われるのである。
そして、このような観点から、現在の「世界情勢」を鑑みると、「軍備」については、「地球環境を完全破壊するほどの規模で装備されている状況」となっており、また、「食」については、「貧富の格差」が存在し、「先進国では十分な食料が供給されているものの、発展途上国では、食料不測の深刻化が激しくなっている状況」とも報告されているのである。つまり、現在の世界情勢は、きわめていびつな状態となっているものと考えているが、この理由としては、やはり、「信用が形となったマネー(お金)の存在」が指摘できるものと感じている。
別の言葉では、今までの状況として、大量に創りだされた「デジタル通貨」が利用されることにより、「軍備」や「食料」などが過剰に供給されてきた状況だったものの、現在では、「いまだに存在する軍事紛争」や「地球環境の悪化」などにより、「食料」に関して、さまざまな問題が発生し始めた状況とも想定されるのである。つまり、現在の世界情勢は、「根のない切り花」のように、「根本の信用が失われながらも、表面上の姿だけが整っている状況」とも考えられるのである。
より具体的には、「コンピューターネットワークの中を、デジタル通貨が流れることが可能な状況下では、全く問題がない状態」でもあったが、今後は、徐々に始まっている「世界的な紙幣の増刷」が、「ある日突然に、世界の金融システムを麻痺させる可能性」も予想されるのである。つまり、「世界中の人々が、現在のデジタル通貨に対して、信用を喪失する状況」のことだが、この点については、「信用の崩壊は、一瞬の出来事である」という格言のとおりに、「ほぼ瞬間的に発生する事態」も想定されるのである。
そして、このような状況下で思い出されるのが、冒頭の「孔子の言葉」であり、実際には、「武力」や「食」の根源は、人々の「信用」を基にした「分業」にあり、このことが、人類社会にとって、最も大切なものだったものと考えている。