本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.3.24

信用本位制における金利とインフレ率

金融業に携わって、今年で46年目を迎えるが、この間、最も悩まされたことは、「なぜ、ゼロ金利やマイナス金利が実現可能だったのか?」という点である。つまり、従来の経済学が、全く役に立たず、新たな理論を模索せざるを得なかったわけだが、この過程で気付かされたことは、「金融商品の出現と大膨張」であり、実際には、「1980年代初頭から始まったデリバティブの大膨張」が、「実物商品の経済統計に含まれない、新たなオカネとモノとの関係性」を産み出した状況だった。

具体的には、「デジタル通貨の出現」であり、また、「さまざまな金融商品の創出」のことでもあるが、この結果として発生した現象は、「従来の金利やインフレ率が、ほとんど実態を表していない事実」だった。別の言葉では、「金融界のブラックホールの中で、いろいろな金融商品が、デジタル通貨によって取引される状態」となったために、従来の「実物商品が、紙幣や硬貨などで取引される状態」については、「時代遅れの経済活動」と理解されるようになったのである。

しかし、このような状況については、典型的な「バブルの状態」であり、実際には、「実体経済の成長」が作り出した「マネー経済の大膨張」、すなわち、「信用本位制」という「新たな通貨制度」において、「新たな商品(モノ)と通貨(オカネ)が産み出した、現実離れした仮想現実の世界」だったことも見て取れるのである。つまり、日本の童話にある「浦島太郎と竜宮城」のような世界が、数十年間に亘り、繰り広げられてきたわけだが、このことは、「西洋文明から東洋文明への移行期に特徴的な現象」だと感じている。

具体的には、「1600年前に発生した西ローマ帝国の崩壊」の時にも、「マネーの大膨張」と「精神的な荒廃」が見られたわけだが、当時と今回との違いは、「グローバル化により、規模が大きくなった点」だと考えている。つまり、これから発生する現象としては、1600年前を上回る、「巨大なインフレの大津波」であり、このことは、すでに発生しているものと想定されるのである。

そのために、現時点で必要なことは、「デジタル通貨の枯渇が、今後、どれほどの速度で、デリバティブなどの金融商品を破壊するのか?」を考えることであり、実際には、今回の「ロシアによるウクライナへの侵攻」と同様に、「ほぼ瞬間的に、デリバティブやデジタル通貨が消滅する可能性」を理解することでもあるが、現在、この点を危惧する人は、世界的にも皆無の状況だと感じている。