本間宗究(本間裕)のコラム
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2022.7.14
13兆円の賠償命令
「東京地裁は、7月13日、東電の旧経営陣に13兆円余りの賠償を命じた」という報道がなされたが、この点については、「驚き」とともに「ある種の違和感」を覚えたというのが偽らざる感想だった。つまり、「四人の旧経営陣は、最高裁で同様の判決が出た場合に、どのようにして賠償金を支払うのか?」という疑問を持ったのだが、実際には、「被疑者の自己破産により、国家が賠償金を負担する可能性」が高いものと考えられるのである。
より詳しく申し上げると、「廃炉にかかる費用」や「被災者への損害賠償費用」、あるいは、「除染などの対策費用」などについては、「東電や国家の負担により、すでに支払われた状況」とも言えるのである。別の言葉では、「誰が、実質的な責任を負うのか?」という点について、「国家や東電は、名を取って実を捨てた状況」とも思われるが、この点に関する問題点は、「今後、国家と国民との関係性が、どのように変化するのか?」だと感じている。
つまり、「国家の態度」としては、「今回の事故は、四人の旧経営陣に責任があり、国家には問題がなかった」というような状況とも思われるが、この点から危惧されることは、「今後、日銀などに、大問題が発生した場合に、どのような事態が発生するのか?」ということである。具体的には、すでに報道された「日銀の債務超過に関する懸念」であり、また、「日本がハイパーインフレに見舞われる可能性」のことでもあるが、仮に、最悪の事態が発生したとすると、「その時に、どのような処置が取られ、また、だれが責任を負うのか?」が気に掛る状況とも言えるのである。
そして、この点について、「過去100年間に、30か国以上で発生したハイパーインフレ」を検証すると、ほとんどの場合において、「国民の負担で、今までの借金を棒引きにする手法」が取られてきたことが見て取れるのである。つまり、「ハイパーインフレに見舞われた後に、黒田日銀総裁に、数百兆円もの賠償金を命じたとしても、すでに、後の祭りの状態」となっていることが理解できるのである。
そのために、今後の注目点は、「国民が、いつ、現在の金融政策の危うさに気付き、自分の預金を実物資産に交換し始めるのか?」ということでもあるが、この点に関して、現在、気になる事実は、「ドイツ銀行やJPモルガンなどの株価が、急落を始めている状況」である。つまり、間もなく、私が想定する「デリバティブの時限爆弾が破裂する時期」が近づいており、「このことを察知した人々が、銀行株を売却しているのではないか?」とも感じられるのである。