本間宗究(本間裕)のコラム
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2022.9.16
80億人の換物運動
「失われた30年間」の期間に、「水茹での蛙」の状態となった日本人は、現在、思いがけない「円安」や「世界的なインフレ」などを見ることにより、「いったい、世界で、どのような事が起こっているのか?」を真剣に考え始めた状況のようにも感じている。具体的には、「リスクオンやリスクオフ」などの「曖昧な経済表現」に飽き足らなくなり、より具体的に、「インフレ」や「お金」などの本質に迫り始めたものと思われるが、この時の問題点は、やはり、「インフレを表す指数」に関して、「どのような商品が対象となっているのか?」が理解できない状況だと感じている。
より詳しく申し上げると、「1971年のニクソンショック」以降、「世界の金融情勢」は様変わりの状態となったが、具体的には、それまでの「実体経済の成長」を受けて、「マネーの大膨張」という「お金の性質」の激変が発生した状況のことである。ただし、この時の問題点は、現在の「インフレ指数」が信ぴょう性を失った状況であり、この理由としては、「インフレを集計する指数」に従来の方法が踏襲されたことが指摘できるのである。
そのために、現時点で必要なことは、「現在の世界には、どのような通貨と、どのような商品が存在するのか?」を具体的な数字で把握することであり、特に、「我々の生活に必要な食料」などに関して、「今後、どのような展開が予想されるのか?」を真剣に考慮することである。つまり、現在では、「80億人の人類が、史上最大規模のマネーを保有している状況」となっているために、今後、最も注意すべき点は、「このマネーが、一斉に、実物資産に向かい始める可能性」とも想定されるのである。
具体的には、「デリバティブのバブル崩壊」や、その後に想定される「大量の紙幣増刷」が引き起こす「金融界の白血病」に遭遇した人々が、一斉に、「食料や貴金属などの一次産品」を購入し始める可能性のことである。別の言葉では、本当の意味での「デマンドプルのインフレ」が発生する事態のことでもあるが、現在の「経済学」については、「価格は需要と供給で決定される」 という理解はあるものの、「需要は、どのような要因で決定されるのか?」を答えられない問題点が存在するのである。
つまり、本当の意味での「行動経済学」とも言える「人々が、どのような商品に、どれほどのマネーを使うのか?」が理解できず、また、「現在の世界において、どれほどの購買力が存在するのか?」を認識できない状況のために、今後、私が最も憂慮する事態は、やはり、「80億人の換物運動」が、一斉に発生する可能性である。