本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2023.3.30

中国の金融混乱

現在の「中国の金融混乱」は、「西洋諸国の金融混乱」と、大きな違いが存在するものと思われるが、実際には、「民間金融機関が簿外で保有するデリバティブ」のことである。つまり、「西洋諸国」の場合には、「1997年から始まった信用収縮」以降、「G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)」において、「OTCデリバティブ」が急激な成長を見せたことも理解できるのである。別の言葉では、「民間金融機関で、デリバティブという商品とデジタル通貨の大膨張」が発生したために「不動産バブルの崩壊で発生した、民間企業や個人の不良債権」が民間の金融機関で吸収が可能だった状況のことである。

ところが、今回の「中国の不動産バブル崩壊」を吟味すると、「日本の約4倍程度の不良債権」が発生する可能性がありながら、「民間金融機関における余裕が、ほとんど存在しない状況」とも想定されるのである。つまり、「1929年のアメリカ」と同様に、「国家の財政」が健全な状況下で、「民間金融機関の連鎖破綻」が発生する可能性が危惧される状況のようにも感じられるのである。

別の言葉では、「1923年のドイツ」のように、「中央銀行が、紙幣の増刷により、不良債権を引き受けざるを得ない状況」が、間もなく、訪れるものと感じているが、この点については、「実体経済の悪化」が、より一層、「国家財政のひっ迫」をもたらすものと考えている。つまり、「中央銀行の資金繰りが悪化し、中央銀行のバランスシートを増大させることにより、市中への資金供給が実施される状況」こそが、本当の意味での「インフレ(通貨価値の下落)」を引き起こすものと想定されるのである。

そして、この点に関して、「西洋諸国」の場合には、「民間金融機関の簿外(オフバランス)において、バランスシートの残高を増やすことが可能だった」という状況が、「中国」の場合には、この部分が欠如することにより、一挙に、「1991年のソ連」や「1923年のドイツ」のような状態に陥る可能性も考えられるのである。ただし、この点については、「西洋諸国」においても、すでに、「デリバティブと国債の金融ツインタワーが崩壊を始めた段階」とも想定している。

そのために、今回は、「中国」と「西洋諸国」が、ほとんど同時に、「紙幣の増刷」、あるいは、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」に迫られる状況も想定されるが、実際に起こることは、やはり、「80億人の換物運動」という「通貨を受け取った人々が、慌てて、市場で実物資産に交換を始める動き」とも言えるようである。