本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.6.5

米国の債務上限問題

懸案だった「米国の債務上限問題」については、ご存じのとおりに、「2025年1月までのサスペンション(一時的な停止)」という結論に落ち着いたが、この結果として湧き上がってきた議論は、「1971年のニクソンショックと似たような結論だったのではないか?」というものだった。つまり、1971年当時は、「金本位制」が採用され、「金とドルとの交換」が可能な状況でもあったが、実際には、「ベトナム戦争」で軍事費を使いすぎた「アメリカ」に対して危機意識を持った「フランス」や「ドイツ」などが、「ドルではなく、金(ゴールド)による支払いを求めた」という状況だったのである。

しかし、当時のアメリカとしては、「金(ゴールド)による支払い」が難しかったために、結果として、「一時的な停止」が宣告されたわけだが、このことが、有名な「ニクソンショック」と呼ばれるものだったのである。つまり、本来は、「短期間で金本位制に戻るはずだった」という状況が、実際には、「50年以上も、一時的な停止が継続されていている状態」となっていることも理解できるのである。

そのために、今回の「米国の債務上限問題」に関しても、「ニクソンショックと同様に、長期間にわたり、サスペンションが実施されるのではないか?」という危機意識が蔓延すると同時に、「これ以上の時間稼ぎは不可能である」という認識が広まっている状況となっているのである。つまり、「米国の中央銀行であるFRBが、最後の手段に訴え始める可能性」のことでもあるが、実際には、「CBDC(中央銀行デジタル通貨」の発行」、あるいは、「紙幣の増刷」のことである。

別の言葉では、「1923年のドイツ」などと同様に、「ハイパーインフレで国家の借金を棒引きにする政策」のことであり、現在では、この結果として、「巨額の資金が、貴金属の現物を大量購入し始めた状況」となっているのである。つまり、「LME(ロンドン金属取引所)」や「COMEX(シカゴ・マーカンタイル取引所)」、あるいは、「上海先物取引所」などで、「大量の貴金属が現引きされている事実」が確認されているのである。

より詳しく申し上げると、「中央銀行」のみならず、「機関投資家」や「個人の富裕層」までもが、「貴金属の現物を保有し始めた状況」となっており、このことは、「米国」、そして、「世界各国で、ハイパーインフレが発生する可能性」が危惧されている状況とも考えられるが、この点に関する問題点は、やはり、「日本で、ほとんど、この議論が行われていない事実」とも言えるようである。