本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.6.8

国家財政のシュリンクフレーション

食料品の価格は、現在、急激な上昇を見せているが、以前に用いられたインフレ対策の一つとして、「シュリンクフレーション」、すなわち、「10個で100円の商品などに関して、8個で100円というように、数量を減らして実質的な値上げを図る方法」が存在した。つまり、「その商品に対する国民からの信頼感」が失われないように、姑息な手段で値上げを図ってきたわけだが、実際のところ、現在の「国家財政」に関しても、「マイナス金利によるシュリンクフレーション」が発生している状況のようにも感じている。

具体的には、「国家財政」の実情として、最初に、「税金の徴収」という方法が存在するものの、その後、「税収不足に陥った政府」が取る方法は、「将来の税金」である「国債」を発行することとも言えるのである。また、「国債の発行」が難しくなると、その次の方法として、「中央銀行による国債の買い付け」、すなわち、「国民の預金を利用して、将来の税金を徴収する方法」が採用されるものの、今回の「マイナス金利」が意味することは、「将来の税金のみならず、現在の税金までもが徴収されている事実」とも理解できるのである。

より詳しく申し上げると、「国家が、マイナス0.1%で、一兆円の一年国債を発行すると、年間に10億円の金利が受け取れる事実」のことであり、このことは、「海外の国々が、現在、5%程度の金利を支払っている現実」と比較すると、「天と地ほどの違い」が存在することも見て取れるのである。つまり、「1000兆円の国家債務に対して、日本が5%の金利を支払うと、50兆円の負担が生じる状況」という計算になるものの、実際には、「マイナス金利により金利を受け取っている状況」であることも理解できるのである。

そのために、「前日銀総裁の黒田氏」は、かたくなに利上げを拒否してきた状況でもあったが、その結果として発生した変化は、「円安」であり、このことは、「国家の体力」を計るバロメーターである「金利と為替」に関して、「低金利を守ったことにより、為替に反動が発生した状態」とも言えるのである。そして、今後は、「国家の体力」が、より一層、失われるとともに、「政府に対する国民の信頼感」が喪失することにより、一挙に、「金利の上昇」が発生する展開も想定されるのである。

具体的には、「軍国主義から民主主義への大転換」を引き起こした「1945年8月の日本人」と同様に、「預金を引き出して、実物資産を購入し始める動き」のことでもあるが、このことは、典型的な「ボトルネック・インフレ」、すなわち、「劇場の火事」のような状況を意味するとともに、急激な「ハイパーインフレ」を引き起こすものと考えている。