本間宗究(本間裕)のコラム
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2023.6.7
プーチンの運命共同体
ロシアのプーチン大統領が頻繁に使う言葉の一つに「運命共同体」があると言われているが、この事実には、大きな違和感を覚えるとともに、思い出されたのが、「1980年代における日本の企業社会」だった。つまり、当時の日本では、「企業と社員は運命共同体である」、あるいは、「終身雇用制のもとに、定年まで勤めあげることが美学である」というような認識が、広く共有されていたのである。
しかし、その後の展開としては、「1990年のバブル崩壊」や「日本の失われた30年」などの言葉からもお分かりのとおりに、「日本の終身雇用制が崩壊するとともに、日本企業は雇用よりも利益を重視する態度に変化した」という状況だったのである。つまり、「成長中の企業」については、洋の東西を問わず、「社員の囲い込み」が実施されるものの、一旦、「利益の成長」が止まった時には、当然のことながら、「社員のリストラ」が始まることも見て取れるのである。
このように、「共同体と利益の関係性」に関しては、基本的に、「成長の過程では、規模の拡大とともに利益が増加する展開」が想定されるが、問題は、「過去30年間の日本のように、成長が止まった時に、共同体の維持が難しくなる状況」とも言えるのである。別の言葉では、「共同体の規模と形態は、時間の経過とともに変化する」ということが不変の真理だと思われるが、今回の「運命共同体」という言葉については、「時間を無視して、共同体に属さなければいけない義務」が存在する可能性も指摘できるのである。
つまり、「共同体や独裁者などへの絶対的な忠誠心」が問われている状況のようにも感じられるが、実際には、「独裁者の恐怖心」や「排除の論理」などが働くことにより、「共同体の規模縮小、あるいは、分裂」などが発生することが、歴史の教えることとも言えるのである。別の言葉では、「30年ほど前の日本」からも明らかなように、「運命共同体」という言葉が使われたこと自体が、すでに、「共同体や組織の崩壊」が始まっている状況を象徴しているようにも感じられるのである。
しかも、現在では、「西洋の先進各国のすべてが、財政面において、1991年のソ連のような状態」となっているために、今後は、「グローバル共同体の崩壊」に伴う「世界的な信用消滅」も想定されるのである。別の言葉では、「文明法則史学」が指摘する「西洋の唯物論的な時代の終焉」のことでもあるが、実際には、残念ながら、「この点に気付いている人が、ほとんど存在しない状況」とも言えるようである。