本間宗究(本間裕)のコラム
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2023.9.12
人的資本経営の問題点
大手企業に対し、2023年3月決算から「人的資本の情報開示義務」が課されたことにより、現在、金融市場で「人的資本経営」という言葉が注目され始めたようだが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。つまり、以前の「データ資本主義」などの用語と同様に、「近い将来に使われなくなる可能性」を危惧している状況でもあるが、その理由としては、やはり、世界的な「信用の消滅」、あるいは、「マネーの消滅」の危機が指摘できるものと考えている。
別の言葉では、「村山節(みさお)の文明法則史学」や「シュペングラーの西洋の没落」などで指摘されているように、これから想定される展開は、「暴力政策による貨幣の破壊」とも想定されるからである。つまり、「貨幣の歴史」を訪ねると、現在の「マネー(お金)」が創り上げられるまでには、「西ローマ帝国の崩壊以来、約1600年の時間が必要だった状況」とも思われるのである。
より詳しく申し上げると、西ローマ帝国で築き上げられた「当時のグローバル共同体」が崩壊し、その後、「数多くの小さな共同体」へ分離したわけだが、このことが、実は、「史的唯物論」が指摘する「資本主義の崩壊後に訪れるコミュニズムの正体」とも思われるのである。つまり、「コミュニズム」が「共産主義」ではなく「共同体主義」を意味するとともに、この時に重要な意味を持つのが、「お金の残高が、共同体の規模によって決定される可能性」であり、実際には、「分業体制が生み出す生産性の向上が、共同体の規模と信用を拡大させるとともに、大量のマネーが創り出される構図」とも理解できるのである。
その結果として、現在では、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務残高」がそびえ立っている状況でもあるが、実際には、「コンピューターネットワーク」を通じて、「数多くの銀行や金融機関、そして、中央銀行や国家が繋がっている状態」ともいえるのである。つまり、現在では、「2023年2月」に発生した「トルコの大地震」の時のように、「一部の銀行がパンケーキクラッシュに見舞われると、金融システム全体が、あっという間に崩壊する可能性」が危惧される状況ともいえるのである。
そして、この時に重要な役割を果たすのが、「金融界で隠蔽され続けた不都合な真実」、すなわち、いまだに報道されない「OTCデリバティブ」とも思われるが、この点に関して、現在、大きな意味を持つのが、「世界的な金利上昇」であり、また、「金利上昇がもたらす金利負担の増加」だと考えている。