本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.10.24

グローバル共同体の崩壊

「マネーの歴史」を研究すると、たいへん興味深い事実に気付かされるが、それは、「西暦400年から1900年までの約1500年間、ほとんどの期間において、金や銀などが通貨として使われていた状況」である。つまり、「20世紀以降の世界的なマネーの大膨張」、あるいは、「西暦400年までの西ローマ帝国におけるマネーの大膨張」とは違い、「金貨や銀貨などがマネーとして使われていた事実」のことである。

そして、この理由としては、「共同体の規模」が挙げられるものと思われるが、実際には、「共同体の規模拡大により、マネーの総量が増える状況」であり、しかも、最後の段階では、「1971年のニクソンショック以降の状況」からも理解できるように、「コンピューターの中に存在する単なる数字」までもが「本位通貨」となり、「世界的な経済成長のけん引役」となったことも見て取れるのである。つまり、「信用」を基にした「マネー」の膨張が、「共同体の規模拡大」に貢献するとともに、最後の段階で、「お金が最も大切である」という理念を意味する「資本主義」を生み出したことも理解できるのである。

しかし、その後の展開としては、「西ローマ帝国」と同様に、「財政赤字とインフレで、あっという間に、帝国の崩壊が発生する展開」につながるものと感じているが、この点に関して、現在、最も注目すべき現象は、やはり、「グローバル共同体の崩壊」のようにも感じている。つまり、現在の「新たな東西冷戦構造」に関しては、「1980年代の中国の資本主義化」や「1990年代の東欧諸国の資本主義化」が、完全に逆回転を始めた状況のようにも思われるのである。

あるいは、「マネーの膨張」が限界点に達したために、「グローバル共同体の内部分裂」が発生した可能性も考えられるが、このような状況下で想定される現象は、やはり、「1600年前と同様のインフレであり、また、数多くの小さな共同体(コミュニティー)への大分裂」とも想定されるのである。つまり、「大膨張した世界のデジタル通貨」に対して、多くの人々が、「裸の王様」のような印象を持ち始めることにより、通貨の根本である「信用」が完全喪失する展開のことである。

そのために、これから必要なことは、「貨幣の歴史」を吟味しながら、「どのような過程を経て、どれほどの期間で、貨幣(マネー)の崩壊が進展するのか?」を考えることであり、この点に関して参考になるのが、やはり、シュペングラーの「西洋の没落」で述べられている「西暦2000年から2200年」という期間とも考えられるようである。