本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.2.3
金と紙幣とデジタル通貨
過去100年余りの「通貨の歴史」については、「氷が解けて水になり、また、その後に水蒸気になったような状況」とも海外で言われ始めたが、このことは、実に的を射た表現のようにも感じている。つまり、「金(ゴールド)」が「紙幣」になり、また、その後に、「デジタル通貨」へと変化した状況のことでもあるが、この過程で発生したのが、「通貨膨張に伴う経済成長」という「経済面での温度上昇」だったことも理解できるのである。
より詳しく申し上げると、1913年に設立された「FRB」では、「金貨本位制」が採用されており、このことは、「ほとんどの通貨が金貨だった状況」を表しているものの、その後は、「1933年の金貨没収」により「金地金本位制」、すなわち、「政府が金を保有して、同時に、紙幣を発行する状態」へと変化したことも見て取れるのである。また、その後の変化としては、「1944年のブレトンウッズ体制」により「アメリカだけが金地金本位制を採用し、その他の国々は為替でアメリカと連動する金為替本位制」が採用されたものの、究極的な変化としては、「1971年のニクソンショックで、金本位制が廃止された事実」が指摘できるのである。
つまり、この事件をきっかけにして、「紙幣からデジタル通貨への変化」が発生したわけだが、実際には、「1980年代初頭から始まったデリバティブの大膨張により、デジタル通貨を利用した金融商品が大量に生産された状況」のことである。別の言葉では、「通貨の残高」が水蒸気のような状態で大膨張した結果として、「世界的な経済成長」が実現されたものの、問題点としては、「バランスシートの大膨張」がもたらした「資産と負債の急増」であり、また、「バブル崩壊後に発生した不良資産の急増」とも理解できるのである。
具体的には、「民間で発生した不良債権が国家に移行した展開」のことでもあるが、この時の問題点は、「国家債務が、最後の段階で紙幣に変化する事態」であり、実際の状況としては、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)以降、中央銀行と国家の債務が急増した事実」が指摘できるものと考えている。つまり、このことは、「水蒸気が雲に変化した状態」を表すとともに、その後、「雨となって地面に降り注ぐ展開」、すなわち、「水蒸気だったデジタル通貨が、再び、水の紙幣に変化する状況」も想定されるのである。
そして、雨となった「水」が地面の土を払い、再び、「金」の輝きを取り戻す展開、すなわち、「通貨が、再び、氷のような状態」に戻る展開も想定されるが、これほどまでの通貨価値の激変は、「1600年前の西ローマ帝国」以来の出来事ともいえるのである。