本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.3.23

異次元のインフレ政策

現在、日銀のバランスシート残高が急拡大中の状況となっており、具体的には、3月20日の時点で、「総資産が、史上最高額の約771兆円」というように、「米国のQE(量的縮小)」とは反対の動きを見せ始めているのである。そして、このことは、「植田日銀総裁の覚悟」の現れのようにも感じられるが、実際には、「バーナンキ元FRB議長」が指摘したとおりに、「25年ほど前から始まった金融政策における日銀の指導的な役割」が、今回も継続される可能性のことである。

より詳しく申し上げると、「ゼロ金利」や「量的金融緩和」、あるいは「異次元の金融緩和」などと呼ばれる金融政策が、すべて、日銀から始まったものであり、また、今後も、この傾向が継続するものと思われるが、今回は、「異次元のインフレ政策」ともいえる「実質的なCBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」が、日本から始まった可能性である。

つまり、「中央銀行の役割」としては、「最後の貸し手」と呼ばれるように、「国家が資金繰りに窮した場合に、財政ファイナンスが実施される状況」が想定されるが、今回は、古典的な「紙幣の増刷」ではなく、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行」により、「国家の資金繰り」のみならず、「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができない問題」を解決しようとする目論見のことである。

より具体的には、「日銀当座預金」と「貸付金」の両建てで、「バランスシートの残高大膨張」を図る方法とも思われるが、この結果として予想される現象は、「戦後の日本」と同様に、「すべての不良債権を日銀が抱えることにより、国家財政を安定させる事態」とも考えられるのである。別の言葉では、「究極的な国家債務の解消法」ともいえるが、この点については、「江戸時代の貨幣改悪」などと同様に、「国民が気づいたときに、大々的な換物運動が始まる可能性」も危惧されるのである。

つまり、「貨幣価値の急減」に気づいた人から、慌てて、「実物資産を購入する動き」が始まる可能性であり、この結果として予想される展開は、「世界的なハイパーインフレの発生」ともいえるのである。具体的には、「何でもバブルの最終章」という言葉が表すように、「大量に創られ、現存する世界のマネーが、一挙に、小さな実物資産に殺到する動き」のことでもあるが、実際には、すでに「貴金属や穀物などの市場」などで始まった「実物資産の奪い合い」、すなわち、「できるだけ速く現物を獲得しようとする動き」が、今後、いろいろな商品に伝播する可能性のことである。