本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.3.21
植田日銀総裁のホンネとタテマエ
3月19日に開催された「日銀の金融政策決定会合」については、「事前にいろいろな情報がマスコミにリークされた」というような状況のために、「会合を開く意味があったのか?」という疑問を抱かされたが、同時に感じたことは、「植田日銀総裁のホンネとタテマエが認識できたのではないか?」ということでもあった。つまり、「ホンネ」については、事前にマスコミにリークしながら、「タテマエ」については、自分の言葉で記者会見において述べる方法が取られていた可能性のことである。
具体的には、「賃金と物価の好循環を確認し、2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。これまでのイールドカーブ・コントロール、およびマイナス金利政策といった、大規模な金融緩和策は、その役割を果たしたと考えている」という「タテマエ」のコメントのとおりに、「マイナス金利」は解除したものの、一方で、「実質上のゼロ金利政策の継続」という「ホンネ」については、変更がなかった状況のことである。
つまり、「できるだけ超低金利政策を継続しながら、日銀の資金繰り問題に対処しようとする意志」が見えながらも、「表面上の利上げ」を実施した状況とも思われるが、この結果として発生したのが、「急激な円安」だったことも理解できるのである。別の言葉では、投資家の理解したことが、「植田日銀総裁が、依然として、時間稼ぎを目論んでいる可能性」であり、また、今後の展開として予想していることが、「為替防衛のための本格的な利上げ」とも思われるのである。
より詳しく申し上げると、「国家の体力」を測るバロメーターは「金利」と「為替」でもあるが、日本の場合には、「GDPの250%以上もの国家債務残高」を抱えているために、「利上げ」が、即座に、「国家の財政破綻」に繋がる可能性が、海外で危惧されているのである。つまり、「短期借り、長期貸し」の代表例の一つが、現在の「日銀」である事実が、海外で熟知されているものの、日本では、いまだに、「日銀の金融政策は正当で有効である」というような理解がなされている状況のことである。
そのために、今後の注目点は、前述のとおりに、「円安が、今後、どれほどのスピードで進展するのか?」であり、また、最も危惧すべき展開は、「日本」のみならず、「世界各国」で、「国債の入札」が不調に終わる事態、すなわち、「1991年のソ連」と同様に、「国債の買い手」が消滅し、急速に、「財政ファイナンス」が実施される可能性である。