本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.3.26

流動性と支払い能力

現在、世界的に「流動性の枯渇問題」が発生している状況とも思われるが、この原因としては、「バランスシートの非対称性」、すなわち、「資産価格には価格上下の変動が存在するものの、負債残高には不変の状態が継続する事実」が指摘できるものと考えている。つまり、「マネーの大膨張」が意味する「資産と負債の残高急増期」においては、「流動性(リクイディティー)」と「支払い能力(ソルベンシー)」が同時に増加するものの、2008年前後から始まった「金融のメルトダウン」以降は、「資産価格の下落」が、大量の「不良債権」を産み出し、「支払い能力」に問題が発生したものと思われるのである。

具体的には、「何でもバブル」により、最初に、「債券価格の急騰と急落」が発生し、その結果として、「債券価格の急落」が、巨額の「不良債権」を発生させたことも理解できるのである。そして、その次には、「世界的な不動産バブルの発生と崩壊」が、同様のメカニズムで、大量の不良債権を発生させたことにより、現在では、「世界の各国で、流動性の枯渇のみならず、支払い能力の問題が発生している状況」とも考えられるのである。

より詳しく申し上げると、「個人や民間企業」、そして、「民間金融機関」と「中央銀行」の全てにおいて、「バランスシート残高の急膨張後に、資産残高の急減が発生している状況」とも想定されるのである。別の言葉では、「国家の資金需要」を意味する「国債発行残高」の急激な膨張の結果として、「民間資金が、国家に吸い上げられている状況」であり、この時に、特に問題視されるのが、いまだに表面化していない「約600兆ドルのOTCデリバティブのバブル崩壊」とも考えられるのである。

つまり、多くの人々は、現在、「株式市場の生成AIバブル」などに目を奪われて、「金利の上昇が、世界の金融市場に、どのような悪影響を与えているのか?」については、ほとんど考えようともしない状況とも言えるのである。具体的には、「何でもバブルの最終章」が、すでに始まった状況でありながら、いまだに、「デフレやインフレの不毛な議論」に終始している状況のことである。

そして、この点については、「1923年のドイツで、多くの人々が、最終段階においても、ハイパーインフレの発生に気付かなかった事実」と同様の状況とも思われるが、今後の注目点は、やはり、すでに日銀から始まったものと思われる「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行」に関して、「世界中の人々が、いつ、この事実に気付くのか?」ということだと考えている。