本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.3.30

600兆円の逸失金利収入

植田日銀総裁は、3月21日の参院財政金融委員会で、「1993年から2022年までの間に低金利のために家計や企業が手にできなかった『逸失金利収入』は総額600兆円に上る」と述べたが、私自身としては、このことが、「失われた30年の原因」であり、また、「今後の日本に、大きな影響を与えるのではないか?」とも感じている。つまり、「600兆円の金利」を国民が受け取っていたら、日本経済は、はるかに大きな規模の高成長を遂げていた可能性も考えられるのである。

しかし、一方で、「600兆円の金利」を払っていたら、「民間金融機関」のみならず、「日銀」や「日本政府」そのものが、「1991年のソ連」などと同様に、財政破綻に追い込まれていた可能性も想定されるのである。つまり、過去30年余りの日本は、巧妙な金融政策により、「金融面での破綻」を免れてきた状況とも思われるが、現在では、「日銀のバランスシート大膨張」、すなわち、「究極のインフレ政策」ともいえる「財政ファイナンス」が実施され始めた状況とも考えられるのである。

より詳しく申し上げると、今まで隠蔽され続けてきた「約600兆ドルのOTCデリバティブ問題」が隠し切れなくなった結果として、先進各国の中央銀行が、一斉に、「大量のCBDCの発行により、国家債務問題を解決する方法」を取り始めた可能性である。つまり、「すべての不良債権を、一斉に、政府や中央銀行が買い取ってしまう可能性」であり、このことは、「究極の徳政令」のようにも感じられるのである。

しかし、実際に想定される展開は、「この事実に気づいた国民が、一斉に、換物運動に走る可能性」であり、この時には、「CBDCが急速に紙幣に交換される状況」も考えられるのである。つまり、国民が望むのは、「CBDC」ではなく「紙幣」であり、しかも、最終段階では、「受け取った紙幣を、すぐに、市場で実物資産へ交換しようとする動き」までもが発生する可能性も予想されるのである。

そして、このような状況下で、大きな意味を持ってくるのが、「日本人の我慢強さ」とも思われるが、実際には、「失われた30年間」を耐え抜いたことにより、知らないうちに、「将来の生活に対する備え」ができていた可能性である。つまり、「西洋の物質文明」から「東洋の精神文明」への移行に関して、多くの日本人が、「精神的な準備」をしていた可能性のことでもあるが、実際には、「自分に与えられた境遇を、日々の努力により、徐々に向上させる方法」のことである。