本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.3.31

通貨の健全性

100年ほど前の「ロシア革命」の際に、レーニンは、「資本主義を破壊する最善の方法は、通貨を堕落させることだ」と述べ、その後、経済学者のケインズは、「レーニンは確かに正しかった。通貨を堕落させることほど、社会の既存の基盤を覆す巧妙で確実な手段はない。このプロセスは、経済法則の隠れた力をすべて破壊の側に働かせ、百万人に一人も気づかないような方法でそれを行う」と述べたと伝えられている。

つまり、「資本主義」、すなわち、「資本であるマネー(お金)が、主義(最も大切なもの)である」と認識される時代においては、「通貨の堕落」という「通貨の健全性を損なうこと」が。社会基盤を覆す最も巧妙な方法とも理解されていたのである。そして、ロシア革命から100年余り経過した現在、「レーニンの言葉」が実現されようとしているものと思われるが、興味深い事実としては、やはり、ケインズが指摘したとおりに、「100万人に一人も、この事実に気づいていない状況」が指摘できるものと感じている。

具体的には、「100年前の金貨」が、現在では、「デジタル通貨」に変化し、しかも、「人類史上、未曽有の規模で、大量のマネーが創造された状態」のことでもあるが、この結果として発生した現象は、「世界各国で、国家財政が危機的な状態に陥っている状況」ともいえるのである。つまり、「歳入」よりも「歳出」のほうが上回り続けた結果として、「財政赤字が増え続けた状況」のことでもあるが、実際には、「民主主義が衆愚政治に変化した事実」が根本的な原因だったようにも感じている。

また、今回、最も注目すべき点は、「信用の消滅」が、「世界のマネー残高を激減させる可能性」であり、このことは、「1600年前の西ローマ帝国崩壊以来の状態」とも想定されるのである。つまり、現在の「デジタル通貨」に関しては、決して、一朝一夕に創造されたものではなく、実際には、「1600年という時間をかけて、根本の信用が形成されてきた状況」とも想定されるのである。

そのために、これから必要なことは、「歴史のサイクル」を理解しながら、「歴史の全体像」を考えることとも思われるが、具体的には、「シュペングラーの西洋の没落」や「村山節の文明法則史学」などを理解しながら、「今後、どのような時代が訪れるのか?」を考えることでもあるようだ。別の言葉では、「お金が無くなったときに、人々は、どのような行動をとるのか?」について、歴史を尋ねながら、詳しく研究することであり、この時に必要な態度は、過去の常識を拭い去ることのようにも感じている。