本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2024.4.30

日銀の利上げ

現在、「日銀の利上げ」に関して、いろいろな議論が述べられているが、この点に関して、決して避けることのできない最も重要なポイントは、やはり、「約25年間に及んだ実質的なゼロ金利政策の行方」だと考えている。つまり、「日本の超低金利状態」については、「人類史上において、例がないほどの異常事態」であり、そのために、今後の利上げについては、きわめて大きな反動が発生するものと想定されるのである。

別の言葉では、「GDP比で約260%にまで大膨張した国家債務残高」の崩壊を防ぐために、今まで、きわめて異常な金融政策が実施されてきたものの、現在では、「大幅な円安」に見舞われ始めたために、「通貨防衛のための利上げ」を実施せざるを得ない状況に追い込まれたものと考えられるのである。つまり、「国家の体力」を図るバロメーターとしては、「為替」と「金利」が挙げられるが、現在では、「急激な円安」の発生により、「超低金利状態の維持」が難しくなっていることも見て取れるのである。

より具体的には、「日銀の財務状況」に関して、「0.3%程度の利上げで、日銀の収益が赤字に陥る可能性」や「短期借り、長期貸しの弊害」などが指摘されているために、実際には、「日銀が身動きが取れなくなっているような状態」とも思われるのである。つまり、「利上げ」を決断した時には、同時に、「財政ファイナンス」も実施せざるを得なくなるために、現時点では、「BISや他国の中央銀行と協調したCBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」を待っている段階とも想定されるのである。

より詳しく申し上げると、現在は、「1971年から始まった『信用本位制』と呼ぶべき通貨制度」の破綻により、「世界全体の金融システムが崩壊を始めている状態」とも理解できるのである。つまり、世界全体が、「1991年のソ連」のような状況となっているために、これから取れる方策は、「最後の貸し手」である「世界各国の中央銀行」が、「大量のCBDCを発行して、デリバティブや国債などを引き受けること」しか残されていない状況のようにも思われるのである。

そして、このことは、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊時」と似たような状況でもあるが、今後、最も注意すべき点は、「金や銀などの貴金属を基にして創られた信用(クレジット)の消滅」や、その結果として予想される「人類史上、未曽有の規模でのハイパーインフレの発生」とも想定されるが、現時点では、「ケインズやレーニンが指摘したとおりに、100万人に一人も気づいていない状況」のようにも感じている。