本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.5.21

フィスカルドミナンスと財政ファイナンス

最近、海外のみならず、日本でも、「フィスカルドミナンス(財政従属)」や「財政ファイナンス」などの言葉が頻繁に聞かれるようになったが、この理由としては、やはり、「中央銀行の資金繰り」に問題が発生し始めた点が指摘できるものと感じている。つまり、金融の歴史を遡ると、民間部門で発生した「大量の不良債権」が、その後、「民間銀行」や「中央銀行」などへと移行する過程で、「バランスシートの大膨張」が発生し、最後の段階では、「紙幣の大量発行」が実施されたことも見て取れるのである。

別の言葉では、「マネーの大膨張」の過程で、前半の「民間部門」に続き、後半では、「中央銀行」のバランスシート残高が急拡大するものの、「バランスシートの非対称性」、すなわち、「資産には上下の価格変動がありながら、負債には変動がない状況」のために、「資産価格の下落」が「不良債権の発生」を引き起こすとともに、最後の段階では、国家そのものが「破綻」する可能性も見て取れるのである。

そして、この点については、「共同体の規模拡大」が引き起こす「組織に対する人々の隷従化」が、大きな役割を果たしているものと感じているが、実際には、「全体と個人の関係性」において、「属する社会や共同体の規模が大きくなればなるほど、個人の相対的な力が低下する状況」のことである。つまり、現在のような「2000万人や3000万人規模の大都会」では、「社会の部品となった個人は、マネーの力にひれ伏すとともに、巨大な中央集権政治の言いなりにならざるを得ない状況」のようにも感じられるのである。

その結果として、現在は、冒頭の「フィスカルドミナンス」が発生している状況とも思われるが、興味深い点は、「クラウディングアウト」が引き起こした「金利の上昇」により、「人々の覚醒が、世界的に始まっている可能性」とも言えるようである。つまり、「金融混錬の激化により、多くの人々が、お金の謎や歴史などを考え始めた可能性」であり、また、「政府や通貨への信用が減少することにより、実物資産に対する認識を改め始めた可能性」のことである。

しかも、今回は、「人類史上、初めて、通貨と実物資産の関係性が断たれるとともに、未曽有の規模でデジタル通貨の大膨張が発生した状況」であるために、これから想定される「財政ファイナンス」、すなわち、「債務の貨幣化」についても、世界的な大混乱をもたらす可能性が想定されるが、重要なポイントは、やはり、「歴史を振り返りながら、自分の人生において、何が重要なのか?」を考えることのようにも感じている。