本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.5.19

農中の資本増強

5月19日の日経新聞に、「農中に対する資本増強の検討」という記事が掲載されたが、この点については、以前から想定していたとおりに、「デリバティブの完全崩壊」を示唆するような出来事のようにも感じている。別の言葉では、「26年前の1998年」が思い出された状況でもあったが、実際のところ、「その当時は、長銀に対する資本注入により、金融システムの崩壊が免れた状況」だった可能性も指摘できるのである。

より詳しく申し上げると、「1997年から始まった世界的な信用収縮」により、当時の世界的な金融システムは、崩壊寸前の状況だったが、前述の通りに、最後の段階で、「長銀に対する資本注入」が実施されるとともに、その後、「デジタル革命」が発展した状況だったことも見て取れるのである。ただし、この点については、その後の検討により、「オフバランス(簿外)におけるデリバティブの大膨張」が、最も重要な役割を果たしていたものの、今回の「農中に対する資本増強の検討」については、「26年前と比べて約30倍の規模での金融大混乱が始まった可能性」を表しているようにも思われるのである。

具体的には、「1971年のニクソンショック」から始まった「マネーの大膨張」は、最初に、「日本の土地バブル」を引き起こし、その結果として、「1997年から1998年にかけての金融大混乱」に繋がったものと想定されるのである。しかし、この時には、「日本の土地バブル」と比較して「約30倍の規模でのデリバティブ大膨張」が発生したために、結果としては、「デジタル通貨の大膨張がもたらしたデジタル革命」へと、人々の興味と関心が移行した展開だったことも見て取れるのである。

つまり、「世界の金融システム」については、「新たな資金が供給される限り、崩壊を免れ、次の成長につながる性質」が存在するものの、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」以降は、「リフレーション政策」の実施、すなわち、「世界各国が、中央銀行のバランスシートを拡大させる方法」により、金融システムの崩壊を先送りさせた状況だったことも理解できるのである。

具体的には、「日本の土地バブルと比較して約30倍の規模で不良債権が積みあがった状況」とも考えられるのである。ただし、この点については、「デリバティブ」が「金融界の大量破壊兵器」といわれるように、これから想定される展開としては、「大量のデジタル通貨が紙幣に転換されるとともに、実物資産へ逃避を始める事態」であり、実際には、「世界的なハイパーインフレの発生」と呼ぶべき状況のようにも感じている。