本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.5.28

皇帝主義の崩壊

100年ほど前に著された「シュペングラーの西洋の没落」という書では、「西暦2000年前後に皇帝主義が完成する可能性」が指摘されていたが、その後の展開を考えると、まさに、この通りの状況だったようにも感じている。別の言葉では、「権力のバブル化」とでも呼ぶべき状況が発生したものと思われるが、一方で、現在の注目点としては、すでに、「皇帝主義の崩壊」が始まった可能性が挙げられるものと考えている。

より詳しく申し上げると、「村山節の文明法則史学」が指摘するとおりに、「20世紀の後半には、民族大移動の前半部分である大都市への人口集中が発生した状況」だったが、この理由としては、シュペングラーの「大都市の貨幣と知性」が指摘できるようにも思われるのである。具体的には、100年前には、多くの人が予想できなかった「2000万人や3000万人もの大都市」が、世界各地に誕生した事実であり、また、この過程で大膨張した「世界のマネー」が、「金融面のグローバル共同体」を形成した状況のことである。

つまり、「共同体の規模拡大に伴い、人々の態度が隷従化に向かった可能性」であり、実際には、「全体と個人との関係性」がもたらした、「寄らば大樹の陰」や「長い物には巻かれろ」というような心理状態のことである。また、その結果として発生したのが、前述の「権力のバブル化」であり、実際には、「中国やロシアなどの独裁政治」であり、また、「西洋諸国における、政治権力の増大化がもたらした大衆迎合主義」とも思われるのである。

そして、このような「権力の暴走」に関しては、「国民の不満」が、大きなカギを握っているものと思われるが、実際の状況としては、「国民の反発が強くなるまで、このような状態が継続する可能性」も想定されるのである。具体的には、「ロシアや中国における独裁者への不満が表面化する可能性」であり、また、「西洋諸国において、国家財政状態の持続が難しくなる可能性」などのことである。

つまり、現在では、「権力者への不信感」が、世界的に高まっている状況であり、その結果として、「国外へ避難する人々」や「金融システムに影響されない資産への投資」などが急増していることも見て取れるのである。別の言葉では、「民族大移動の後半部分」が、すでに始まっている可能性も想定されるが、この時に参考になるのは、やはり、「1600年前の世界では、どのようなことが起こったのか?」の理解であり、実際には、「西ローマ帝国の崩壊」や「東洋の精神文明の勃興」のことであり、より具体的には、「中国の南北朝時代における仏教の隆盛」などが指摘できるものと感じている。