本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.5.26
レイ・ダリオの歴史観
5月26日の日経新聞に「レイ・ダリオ氏の特集記事」が掲載されていたが、内容としては、「過去500年間の歴史を見ることにより、現在の世界的な金融混乱が理解できる」というような「従来からの彼の意見」の紹介だった。つまり、「オランダのチューリップバブル」や「時は金なり」という思想が誕生した「西暦1600年前後」からの歴史を見ることにより、「現在の世界的な金融混乱が説明可能である」との認識とも思われるが、実際には、はるかに多くの難しい問題が存在する状況のようにも感じられるのである。
より詳しく申し上げると、私自身は、「1987年のブラックマンデー」に大きな衝撃を受け、その後、「金融の歴史」をさかのぼり始めたものの、この過程で突き当たった問題点が、「西暦1600年以前の世界的な金融情勢は、どのような状況だったのか?」ということだったのである。別の言葉では、「西暦400年前後にピークを付けたものの、その後、崩壊を迎えた西ローマ帝国」が、現在の世界的な情勢と酷似している点は、西洋でも、多くの人々が、指摘し始めている状況でありながら、「西暦400年から1600年までの展開については、ほとんどの人が無視している状況」のことである。
そのために、私自身も、さまざまな試行錯誤を繰り返した結果、ようやく到達したのが、「村山節の文明法則史学」であり、その後、「約30年間の検証」を経た後の現在では、「歴史の全体像」が見え始めるとともに、「共同体の規模がマネーの残高を決定するのではないか?」という仮説が出来上がった状況ともいえるのである。つまり、「マネー(お金)の根本」である「信用」が醸成され、現在のような「グローバル共同体」が形成されるためには、「1000年以上の永い時間」が必要だった可能性のことである。
そして、このような観点から、「今後、どのような世界や社会が展開するのか?」を考えると、実際には、「1600年前の世界情勢が、最も参考になるのではないか?」とも感じている次第である。つまり、現在の「世界的な信用消滅」が意味することは、「約800年間も継続した西洋の唯物論的文明」の終焉を意味するとともに、今後は、「約800年間の東洋的な精神文明の時代」が幕を開ける状況のようにも感じられるのである。
別の言葉では、「マネー(お金)の追求」という「画一的な価値観」によって形成された「グローバル共同体」が、「数多くの小さな共同体(コミュニティー)」に分裂することにより、「多様な価値観」が生まれ始めている状況のことでもあるが、実際には、「歴史は繰り返す」という言葉のとおりに、「1600年前と似たような状態」とも思われるのである。