本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.6.27
米国銀行の生前遺言
6月22日のブルムバーグに掲載されたニュースに、「米金融当局は21日、経営破綻後の事業整理の道筋を示す『生前遺言』の審査結果を発表し、米銀大手4行が提出した計画書について改善を命じた」というものがあった。より具体的には、「米連邦準備制度理事会(FRB)と米連邦預金保険公社(FDIC)は共同声明で、JPモルガン・チェースとバンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス・グループ、シティグループの計画書はいずれも『不備(shortcoming)』があると指摘した」というものであり、特に、「当局は4行それぞれのデリバティブ(金融派生商品)への対処方法に問題があると判断した」とも説明されているのである。
そして、この点については、私が以前から指摘していた通りの展開とも思われるが、実際には、「農中の巨額損失をキッカケにして、デリバティブのバブルが完全崩壊を始めた可能性」のことである。別の言葉では、「1980年代初頭に誕生し、その後、2010年前後にピークを付けたデリバティブ」が、「2020年代初頭までの約40年間、世界の金利を低下させ続けたものの、金利上昇によりバブルが崩壊し始めた状況」のことである。
より詳しく申し上げると、現在の「金融界の目に見えないツインタワー」である「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約300兆ドルの世界債務残高」に関しては、「1971年のニクソンショック以降に誕生した信用本位制と呼ぶべき通貨制度」において、「本位通貨となったデジタル貨幣」が、大量の資産と負債を産み出したことが主な原因だったものと考えられるのである。別の言葉では、「通貨の歴史」を遡ると、今回の「マネーの大膨張」については、「西ローマ帝国にまでさかのぼる必要性」があるものと感じているが、実際には、「共同体の規模拡大に伴う社会的な信用の増加が、結果として、信用を形にするマネーの創造につながった展開」のことである。
そして、現在では、最後の砦とも言える「デリバティブ」が完全崩壊を始めた状況とも思われるために、今後の展開としては、「西洋諸国の金融当局者が、デリバティブの処理を図り始めた可能性」が指摘できるものと思われるのである。つまり、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行により、デリバティブに関する不良債権を処理する可能性」のことでもあるが、この時の問題点としては、「現在の通貨制度ができるまでに、1600年もの時間が必要だった事実」が指摘できるとともに、「バランスシート」という言葉が象徴するように、「負債」を消滅させたときに、その裏側に存在する「資産」も、同時に消滅する可能性のようにも感じている。