本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.7.23

非線形のダイナミクス

「カオス理論」の「非線形のダイナミクス」では、「『全てか無か』の形で発生するようにみえる現象も、詳しく調べてみると、多くは、長期間にわたって起きた変化の蓄積である」と説明されており、その具体例として、「純水の氷点が摂氏ゼロ度で沸点が100度」などが挙げられている。つまり、「どのような出来事にも、原因がある」という状況でありながら、「われわれの目に見える『一定の変化』が発生するまでには、長期の準備期間が必要である」とも理解されているのである。

そして、この点を、「マネーとクレジットの理論」に応用すると、「金(ゴールド)から紙幣が派生し、また、その後に、デジタル通貨が派生した原因」についても、説明がつく状況のようにも感じている。具体的には、「共同体の規模拡大に伴い、マネーやクレジットの残高が増加する」という私の仮説に関して、「どの程度にまで共同体の規模が膨張した時に、紙幣やデジタル通貨の発行が始まるのか?」ということである。

別の言葉では、「共同体の規模拡大」に伴い、「生産性の向上」が発生するとともに、「貨幣の重要性」が認識される展開が想定されるが、この点を、実際の「貨幣の歴史」で検証すると、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊」以降は、ほとんどの期間において、「金や銀、あるいは、銅などの実物資産が通貨として使われていた状況」だったことも理解できるのである。そして、「18世紀の産業革命」以降においては、顕著な経済成長が見られたものの、「通貨制度」に関しては、「1933年までのアメリカで、金貨本位制が採用されていた」という状況だったことも見て取れるのである。

ただし、その後は、「1944年のブレトンウッズ体制」により「金為替本位制」と呼ばれる通貨制度、そして、「1971年のニクソンショック」以降は、「信用本位制」と呼ぶべき通貨制度に変化したことも理解できるのである。つまり、「1600年間にも及んだ変化の蓄積が、最終段階で、デリバティブという金融商品やデジタル通貨を産み出した状況」だったものと考えられるのである。

そのために、これから予想される変化としては、「水蒸気のような状態となったデジタル通貨が、景気の低迷とともに雲のような状態となり、その後に、大量の紙幣の雨を降らせ始める展開」である。つまり、現在の「デジタル通貨」に関して、「裸の王様」のように、「影も形も存在しない状況」であることに気付いた人々が、慌てて、本来の通貨である貴金属に殺到し始める可能性である。