本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2024.8.1

天井知らずのインフレ

7月31日に発表された「日銀の利上げと量的引き締めの開始」は、「植田日銀総裁の覚悟」が現れている状況とも思われたが、実際には、以前に申し上げたように、「植田日銀総裁の思惑」が「できるだけ時間稼ぎを行いながら、最後の段階で、天井知らずのインフレ(runaway inflation)に訴える可能性」とも推測されたからである。つまり、「膨張し続ける日本国家の財政赤字」に対処する方法としては、「戦後の日本と同様に、ハイパーインフレしか残されていない事実」を、植田総裁が理解しているものと思われるのである。

そのために、今回、「0.25%の利上げ」と「国債買い付け金額の減額」を発表したものと考えられるが、今後の注目点としては、「天井知らずのインフレ(runaway inflation)」という言葉のとおりに、「きわめて短期間のうちに、ハイパーインフレが発生し、収束する可能性」だと考えている。つまり、「1923年のドイツ」などのように、「約6ヶ月」という期間で、「パンなどの商品価格が、天文的な価格にまで急騰する可能性」であり、しかも、実際の状況としては、「ほとんどの人が、始まる直前まで、まったくハイパーインフレを想定していなかった」とも報告されているのである。

そして、この点については、「1991年のソ連」なども、ほとんど同じような展開を見せた状況だったが、実際には、「国債価格の暴落」、すなわち、「金利の急騰」が始まった時から、「紙幣の大増刷」が実施され、最後の段階では、「インクが無くなる事態」にまで追い込まれた状況だったのである。別の言葉では、「政府や通貨に対する信用が完全に失われた状態」に陥ると、ほとんどの人は、「換物運動」、すなわち、「受け取った紙幣を、すぐに市場で実物資産に交換する動き」に訴え始めることが見て取れるのである。

しかも、このような「ハイパーインフレの発生」については、「1980年代以降の中南米」や「1990年代の東欧」、そして、「2000年代のアフリカ諸国」などで発生していることも理解できるのである。別の言葉では、「先進諸国以外では、頻繁にハイパーインフレが発生している状況」でありながら、ほとんどの人は、「先進国で、ハイパーインフレが発生するわけがない」と認識している状態のことである。

つまり、「1923年のドイツ」や「1945年の日本」で、「実際に、ハイパーインフレが発生した事実」を、現在、ほとんどの人々が無視している状況のことだが、今後の注目点は、「国債の買い手が、世界的に消滅した場合に、一挙に、CBDC(中央銀行デジタル通貨)が発行され、その資金が、急激に実物資産に向かう可能性」だと考えている。