本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.7.31
みんなで渡った赤信号
「新NISAへの資金流入額が、半年間で7.5兆円を超えた」と報道されているが、この点については、「みんなで渡った赤信号」というような状況のようにも感じている。つまり、バブルの絶頂期に言われた「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というような心理状態に、今回も、多くの日本人が陥った可能性のことである。
別の言葉では、「みんなが渡るから怖くない」というように、「赤信号を渡るときの恐怖心が、群集心理によって喪失した状況」とも思われるが、今回の問題点は、以前と同様に、「信号と投資との違い」のようにも感じている。つまり、「投資」に関しては、「購入時の恐怖心」が存在しなくとも、その後に、「保有銘柄の価格変動に対する恐怖心」が存在することも見て取れるからである。
より詳しく申し上げると、私自身の経験則からは、「過去50年弱の期間、多くの日本人が、『株が上がると買い、下がると売る』という投資行動を繰り返してきた状況」だったことも見て取れるのである。つまり、「人の往く裏に道あり花の山」という相場の格言のとおりに、投資の基本は、「人と反対の行動を取ること」にあるものと考えているが、実際には、ほとんどの人が、「順張りの投資」をしてきた状況だったのである。
そのために、私自身としては、口を酸っぱくして、「月足を見ながら、10年単位での割安株に投資する方法」を推奨してきたものの、実際には、「まったく効果が無く、無力感を覚えざるを得ない状況」ともいえるのである。つまり、「日本人に、投資は向かないのではないか?」と何度も自問自答させられたわけだが、この点については、やはり、「専門家と言われる人々の勉強不足」が、主な原因として挙げられるようにも感じている。
より具体的に申し上げると、海外では、「多くの投資専門家」が、きわめてプロフェッショナルな状態のために、「一般投資家が、専門家に頼ることができる状況」とも言えるのである。しかし、一方で、「日本では、証券会社や銀行などによる投信の販売が、国民の主な投資方法となっている状況」のために、「専門家によるアドバイスが受けにくくなっている状態」ともいえるのである。
そして、このことが、「国民の資金が、預金から投資へ移動しなかった原因の一つ」のようにも感じているが、今後は、「政府や通貨への信頼感」が激減することにより、一挙に、「実物資産への資金移動が始まる展開」を想定している。