本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.8.7

円キャリートレードの亡霊

「令和版のブラックマンデーは、円キャリートレードの巻き戻しが原因だった」というような説明が、現在、市場のコンセンサスとなっているようだが、私自身としては、この点に、大きな違和感を覚えている状況である。別の言葉では、「1998年から現在までの世界的な金融情勢」を検証すると、「日本の資金は、ほとんどが、国家の財政赤字や不良債権の処理に充てられていた状態」であり、また、「日本から海外への資金移動については、金額的な面において、それほど影響がなかった状況」のようにも想定されるからである。

より詳しく申し上げると、「2000年前後を境にして、世界的な資金の供給方法が、円キャリートレードからデリバティブの大膨張へと変化した可能性」が考えられるために、現在では、すでに、「円キャリートレードの存在そのものが、亡霊のような存在となり、金額面で、きわめて小さな影響しか持たない状況」のようにも思われるのである。しかも、「なぜ、日本で低金利状態が継続していたのか?」の理由としては、「金利」を上げると、「日銀が債務超過に陥る可能性」や「利払い費が急増し、日本の国家財政が、きわめて短期間のうちに、行き詰まりを見せる可能性」などが危惧されていた点が指摘できるのである。

このように、2000年前後から始まった「世界的な超低金利状態」に関しては、「デリバティブとデジタル通貨の大膨張」が主要な原因であり、「円キャリートレードについては、デリバティブの大膨張を促進するキッカケの出来事にすぎなかった可能性」も想定されるのである。つまり、今までの日本経済は、「メガバンクが保有するデリバティブの恩恵により、超低金利状態の継続が可能だった状況」とも思われるが、現在では、すでに、「デジタル通貨の枯渇」により、「何でもバブルの対象が、デジタル資産から実物資産へと移行を始めた状況」のようにも感じられるのである。

より具体的には、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」以降、「水蒸気のような状態となったデジタル通貨」が、最初に、「国債のバブル」を発生させ、その後に、「世界的な不動産バブルや株式バブル」などを発生させたものの、現在では、すでに、「デジタル通貨の枯渇」により、「水のような状態の紙幣が、世界的に発行される可能性」が高まっていることも理解できるのである。

そのために、これから必要なことは、「目先の劇的な価格変動」に惑わされず、「大きな流れ」を、しっかり把握し続けることであり、基本的には、本当の安全資産である「金(ゴールド)などの貴金属」を継続保有することだと考えている。