本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.8.6

二つのブラックマンデー

8月5日に発生した「日本株の暴落」については、「令和版のブラックマンデー」と呼ばれ始めたようだが、両方の株価暴落を実際に経験した私自身としては、「表面上の類似点が存在するものの、内容面では、まったく逆の状態ではないか?」とも感じている。具体的には、「1987年のブラックマンデー」が、「その後のデジタル通貨の大膨張を示唆していた出来事」だったものの、「今回のブラックマンデー」については、「デジタル通貨の終焉、そして、大量の紙幣発行を示唆する出来事」のようにも思われるのである。

別の言葉では、18世紀ごろから始まった「資本主義」の最終段階で、1971年のニクソンショックをキッカケとして「信用本位制」と呼ぶべき通貨制度が誕生し、その結果として、「単なる数字が、それまでの金(ゴールド)に代わって本位通貨となる事態」が発生したことも見て取れるのである。つまり、「共同体の規模拡大に伴い、マネーの残高膨張が加速した結果として、氷のような状態の金(ゴールド)が、水のような状態の紙幣、そして、水蒸気のような状態のデジタル通貨を創り出した展開」のことである。

より詳しく申し上げると、「1971年から1997年までの約26年間」は、「民間金融機関のバランスシート大膨張により、民間金融機関の預金が大膨張し、日本を中心として土地や株式のバブルが発生した期間」だったものの、その後の「1998年から現在までの約26年間」については、「民間金融機関のオフバランスシート大膨張により、デリバティブとデジタル通貨の大膨張が、日本のバブル時と比較して、約30倍の規模で発生した状況」だったものと想定されるのである。

しかも、今回は、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」から、「デリバティブを利用した市場価格の操作」が実施された状況だったものの、現在では、すでに、「デジタル通貨の枯渇状態」が発生したものと考えられるのである。つまり、「民間部門の資金が国家の財政赤字によって吸い上げられる事態」を意味する「クラウディングアウト」の発生により、「中央銀行自体が、最後の手段である紙幣の増刷、あるいは、その前段階のCBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行を迫られた状況」のことである。

そのために、これから必要なことは、「1987年から現在までの約37年間」に、「どのような変化が発生したのか?」を理解しながら、「これから、どのような資産に、世界の資金が流れるのか?」を考えることであり、実際には、「大量の紙幣が市場に出回ることにより、未曽有の規模でハイパーインフレが発生する可能性」だと考えている。