本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.8.26

経済統計数字の信ぴょう性

8月21日に報道されたニュースでは、「米労働省は2024年分の雇用統計について年次改定の推定値を公表し、3月時点の雇用者数は81万8000人程度の下方修正になる可能性が高い」という説明が行われたが、この点については、「ほとんどの金融専門家が予想していたこと」だったものと感じている。つまり、現在では、「世界第二位の経済大国である中国」のみならず、「世界第一の経済大国であるアメリカ」においても、「経済統計数字の信ぴょう性」が疑われるような状況となっているものと想定されるのである。

別の言葉では、「40年ほど前に、私自身が、アメリカのファンドマネージャー達から受けたアドバイス」が思い出された状況でもあったが、実際には、「投資の実践において、経済統計数字は役に立たない」というものだった。つまり、「政府や金融当局者によって、意図的に、統計数字が歪められる可能性」が存在するだけではなく、すでに始まっていた「経済の金融化」、すなわち、「実体経済よりもマネーの残高の方が急拡大している事実」により、40年前のアメリカでも、「マクロの経済統計を頼りにした実践投資」では、良い運用成績が残せなくなり始めていたものと考えられるのである。

そのために、今回の「大幅な統計数字の下方修正」についても、「海外では、誰も、驚かないような状況ではないか?」とも感じているが、同時に脳裏に浮かぶことは、やはり、「フローである実体経済」と「ストックであるマネーやクレジット」との違いである。つまり、「雇用統計」や「GDP」などの「実体経済に関する統計数字」については、基本的に、「今日と明日との継続性が保証されていない状況」であり、その結果として、「数字の連続性」に信頼感が持てない状況のようにも感じられるのである。

しかし、一方で、「ストックであるマネーやクレジット」については、「今日と明日との継続性」を意味する「数字の連続性」が信用できる状況のために、「金融システム」、そして、「マネーやクレジット」の性質を理解することにより、「未来予測」が容易になる可能性も指摘できるのである。つまり、「マネーやクレジットが、今後、どの商品に向かうのか?」を考えることにより、「次の上昇銘柄が予想可能な状況」のことである。

しかも、現在は、「1600年に一度」とでも呼ぶべき「マネーやクレジットの大膨張が終焉の時を迎えている状態」とも思われるために、これからの「世界的な金融大混乱期」に際しては、より一層、「どのような性格の資金が、どのような商品に流れているのか?」の理解が必要とされるものと考えている。